おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第411回 かの書房

テレビの密着取材を受けている店主の加納あすかさん。

[応援企画]札幌にちいさな新刊書店ができるまで
「かの書房」のチャレンジを追う《開店の行方は?編》

[2019.1.28]

「かの書房」のチャレンジを追う《スタートアップ前編》はこちら!

www.syoten-navi.com

「見込みの甘さと、勉強不足」支援者に誓う立て直し

2018年12月に札幌市豊平区で8坪の小さな書店を開く――。

前回ご紹介した「かの書房」応援記事の更新は、2018年の9月だった。リアル書店の苦戦が続くいま、新刊書店開業を宣言した店主、加納あすかさんの大きな決断に敬意を表し、またファンを増やす一助になればと思い、北海道書店ナビではウォッチを続けている。

当初予定していた開店は延期になった。金融機関からの融資が下りず、資金繰りに難航したからだ。
保証金となる資金がなくては商品である本を卸してくれる取次会社との契約が結べない。だがクラウドファンディングで支援してくれた104人の支援者を思うと、約束した「12月16日開店」に向けて少しでも進んだほうがいいのではないか……。

悩んだ末、加納さんが出した結論は「オープン日を延期することとなりました」。真っ先に支援者に自身の「見込みの甘さと、勉強不足」を詫び、さらに強い気持ちで再出発を誓った。

「いま助けてほしい!」から「応援するよ」までの日々

初めての起業に加納さんが最初に訪ねたのは創業支援をうたう相談機関だったが、そのあとがどうもスムーズに進まなかった。
独学で作成した事業計画書を片手に金融機関に融資を依頼しても門前払い続き。なかには「創業後の融資はご相談に乗ります」と言われ、「創業後じゃなくていま!いま助けてほしい!」と叫び出したいときもあった。

一方で、まだ30歳という加納さんの情熱を応援してくれる味方も現れた。関係者の紹介で税理士とつながり、事業計画書の本格的な修正が始まった。さらに知人が紹介してくれた商工会議所の担当者が読書家だったことも心強かった。
「ところどころで『僕も本屋ができるのはうれしいから応援するよ』と言ってくださる方との出会いがあり、ようやく各機関に提出できる計画書が出来上がりました」

そして年が明けた1月17日、北海道信金と金融公庫からのダブル融資が決定! 自動的に「かの書房」3月18日(月)開店が決まり、うれしい報告が一気に拡散された。

「ご来店される皆様が楽しい・また行きたいと感じて頂けるお店になるよう、そして私自身が楽しいと感じるお店になるように試行錯誤していきたいと思います」(クラウドファンディング支援者への報告メールより)

クリスマスに実験的な古本マーケットでプレオープン!

融資審査の返事が来るまでの間、加納さんも手をこまねいて待っていたわけではなかった。
実はこの時点で早くも、店の改装はほぼ終わっていた。棚が入り、メインの平台となる大テーブルも搬入済み。
この空間を遊ばせている手はないと12月23日からの3日間、空き棚をレンタルする古本フリーマーケットを企画した。

前日に準備をする加納さん。8坪の店内に特注の木製書棚が入っていた。

出店者を募ったところ、札幌ブックコーディネートやまちライブラリー@千歳タウンプラザ、北海道書店ナビ関係者を含めて外部から7店が出店。

加納さんとともに出店者が交代で店番を担当。親交を深めた。

「推しの作家」サインカードも掲示。葛来奈都(かづらなつ)先生をはじめ北海道の作家たちが陣中見舞いに訪れた。

3月前のプレオープンとなった会期中、「ここ、本屋ができるの?」と通りすがりに入ってきた近隣住民も数名いた。
店を開けてみて明らかになった課題は、最寄り駅である地下鉄「美園」駅からのアクセスがわかりづらいこと。
「ブログに駅からの画像付きアクセス情報が必要だとわかりました」

テレビの密着取材を受けている店主の加納あすかさん。
[応援企画]札幌にちいさな新刊書店ができるまで
「かの書房」のチャレンジを追う《開店の行方は?編》

[2019.1.28]

「かの書房」のチャレンジを追う《スタートアップ前編》はこちら!

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「見込みの甘さと、勉強不足」支援者に誓う立て直し

2018年12月に札幌市豊平区で8坪の小さな書店を開く――。

前回ご紹介した「かの書房」応援記事の更新は、2018年の9月だった。リアル書店の苦戦が続くいま、新刊書店開業を宣言した店主、加納あすかさんの大きな決断に敬意を表し、またファンを増やす一助になればと思い、北海道書店ナビではウォッチを続けている。

当初予定していた開店は延期になった。金融機関からの融資が下りず、資金繰りに難航したからだ。
保証金となる資金がなくては商品である本を卸してくれる取次会社との契約が結べない。だがクラウドファンディングで支援してくれた104人の支援者を思うと、約束した「12月16日開店」に向けて少しでも進んだほうがいいのではないか……。

悩んだ末、加納さんが出した結論は「オープン日を延期することとなりました」。真っ先に支援者に自身の「見込みの甘さと、勉強不足」を詫び、さらに強い気持ちで再出発を誓った。

「いま助けてほしい!」から「応援するよ」までの日々

初めての起業に加納さんが最初に訪ねたのは創業支援をうたう相談機関だったが、そのあとがどうもスムーズに進まなかった。
独学で作成した事業計画書を片手に金融機関に融資を依頼しても門前払い続き。なかには「創業後の融資はご相談に乗ります」と言われ、「創業後じゃなくていま!いま助けてほしい!」と叫び出したいときもあった。

一方で、まだ30歳という加納さんの情熱を応援してくれる味方も現れた。関係者の紹介で税理士とつながり、事業計画書の本格的な修正が始まった。さらに知人が紹介してくれた商工会議所の担当者が読書家だったことも心強かった。
「ところどころで『僕も本屋ができるのはうれしいから応援するよ』と言ってくださる方との出会いがあり、ようやく各機関に提出できる計画書が出来上がりました」

そして年が明けた1月17日、北海道信金と金融公庫からのダブル融資が決定! 自動的に「かの書房」3月18日(月)開店が決まり、うれしい報告が一気に拡散された。

「ご来店される皆様が楽しい・また行きたいと感じて頂けるお店になるよう、そして私自身が楽しいと感じるお店になるように試行錯誤していきたいと思います」(クラウドファンディング支援者への報告メールより)

クリスマスに実験的な古本マーケットでプレオープン!

融資審査の返事が来るまでの間、加納さんも手をこまねいて待っていたわけではなかった。
実はこの時点で早くも、店の改装はほぼ終わっていた。棚が入り、メインの平台となる大テーブルも搬入済み。
この空間を遊ばせている手はないと12月23日からの3日間、空き棚をレンタルする古本フリーマーケットを企画した。

前日に準備をする加納さん。8坪の店内に特注の木製書棚が入っていた。

出店者を募ったところ、札幌ブックコーディネートやまちライブラリー@千歳タウンプラザ、北海道書店ナビ関係者を含めて外部から7店が出店。

加納さんとともに出店者が交代で店番を担当。親交を深めた。

「推しの作家」サインカードも掲示。葛来奈都(かづらなつ)先生をはじめ北海道の作家たちが陣中見舞いに訪れた。

3月前のプレオープンとなった会期中、「ここ、本屋ができるの?」と通りすがりに入ってきた近隣住民も数名いた。
店を開けてみて明らかになった課題は、最寄り駅である地下鉄「美園」駅からのアクセスがわかりづらいこと。
「ブログに駅からの画像付きアクセス情報が必要だとわかりました」

書店員の勉強会や北海道作家会、大先輩のアドバイスも

1月中旬には北海道の業界では珍しい「書店員の勉強会」も企画した。参加者は3名と少数だったが、会社の垣根を越えた勉強会はいい刺激や共感の場になったはずだ。今後は月一開催を目指し、ゆるやかなつながりを築いていく。
さらに「北海道作家会」からも声がかかり、集まりに参加した。加納さん世代の若手を軸に作家同士もつながっていく。新しい流れができつつある。

勉強になればと、取次会社が「一万円選書」で有名な砂川の「いわた書店」に連れていってくれたこともある。
大先輩である店主の岩田徹さんから受けたアドバイスは「どこにでも売っている雑誌とコミックに頼る本屋はこれからの時代を生き残れない」。
「かの書房」の周辺に書店はないがコンビニは多い。岩田さんの言葉にコンビニで買えるものは置いてもしかたがないと悟った。
「デザインや写真などの専門誌、コンビニにはない幼年誌も置こうと思っています」

「融資が下りるまで生きた心地がしませんでした」
だができることを見つけては動き、自分をはげました。経営を考えると今後も平坦な道のりとはいかなさそうだが、そう簡単にはあきらめない。私はまちの本屋になると決めたから――。

「かの書房」応援記事、次回の更新は《念願の開店編》になりそうだ。お楽しみに

●加納あすか
上士幌町出身。高校時代に熱気球操縦士ライセンスを取得。当時全国に二人しかいなかった女子高生操縦士として話題を集めた。現在も地元の熱気球クラブに所属。

 

念願のオープン編

www.syoten-navi.com

スタートアップ後編

www.syoten-navi.com

スタートアップ前編

www.syoten-navi.com書店員の勉強会や北海道作家会、大先輩のアドバイスも

1月中旬には北海道の業界では珍しい「書店員の勉強会」も企画した。参加者は3名と少数だったが、会社の垣根を越えた勉強会はいい刺激や共感の場になったはずだ。今後は月一開催を目指し、ゆるやかなつながりを築いていく。
さらに「北海道作家会」からも声がかかり、集まりに参加した。加納さん世代の若手を軸に作家同士もつながっていく。新しい流れができつつある。

勉強になればと、取次会社が「一万円選書」で有名な砂川の「いわた書店」に連れていってくれたこともある。
大先輩である店主の岩田徹さんから受けたアドバイスは「どこにでも売っている雑誌とコミックに頼る本屋はこれからの時代を生き残れない」。
「かの書房」の周辺に書店はないがコンビニは多い。岩田さんの言葉にコンビニで買えるものは置いてもしかたがないと悟った。
「デザインや写真などの専門誌、コンビニにはない幼年誌も置こうと思っています」

「融資が下りるまで生きた心地がしませんでした」
だができることを見つけては動き、自分をはげました。経営を考えると今後も平坦な道のりとはいかなさそうだが、そう簡単にはあきらめない。私はまちの本屋になると決めたから――。

「かの書房」応援記事、次回の更新は《念願の開店編》になりそうだ。お楽しみに

●加納あすか
上士幌町出身。高校時代に熱気球操縦士ライセンスを取得。当時全国に二人しかいなかった女子高生操縦士として話題を集めた。現在も地元の熱気球クラブに所属。

 

念願のオープン編

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スタートアップ後編

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スタートアップ前編

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