おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第389回 整理収納アドバイザー 竹部 礼子さん

Vol.135 整理収納アドバイザー 竹部 礼子さん

収納の知恵がいっぱい詰まったご自宅兼モデルハウスでお話をうかがった。

[本日のフルコース]
整理収納は楽しい未来への投資です!
これを読めば今すぐ家を片付けたくなる本フルコース

[2018.8.20]

書店ナビ 「私、片付けが大好きなんです!」「家にも職場にもいつお客様が来ても大丈夫!」……なーんて堂々と言えたら、どんなにカッコイイことか。
けれども、現実の自分はほど遠く、「やらなきゃいけないのはわかっているけれど」心に重くのしかかるのが、整理収納です。

そこで今回は、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザー1級を持つプロフェッショナルに聞いてみました!
「暮らしをラクに、そして楽しく」というメッセージを掲げて、札幌を拠点に整理収納の楽しさを普及している「リブラク」の竹部礼子さんです。

二級建築士でもある竹部さんは、北欧輸入住宅メーカーに15年間勤務したのち、「家族といましか過ごせない時間を大事にしたい」と職場を退社。
2015年7月17日から「リブラク」の屋号で、整理収納プロデュース業に乗り出しました。
今日おじゃましているご自宅もすみずみまで片付いていて、小学生のお子さんもいる4人家族が実際に住んでおられるとは到底思えません!

階段下は、子どもたちの"秘密基地"のようなスペース。長男に続いて、現在は長女が使っている。

書店ナビ もともと、整理収納はお好きだったんですか?
竹部 いえいえ!私も20代30代のころは普通にストレス買いをしたり、セールで爆買いをしたりで、家の中にモノが増えるばかり。
あるとき、急にそんな状態がイヤになって、今度は後先考えずになんでも捨てちゃう"捨て魔"になって、それはそれであとで「しまった!」と思ったり(笑)。
そんなふうに迷走していた時期に、当時勤めていた職場の先輩が整理収納アドバイザーの資格を勉強していて、「講習、すごく面白かった!竹部さんも行ってみたら?」と勧めてくださったのが、この世界に進むきっかけです。
書店ナビ 片付けを面白がってやれたらいいんでしょうが、どうも「しぶしぶやる」イメージが強くて、その気になれません。
竹部 わかります。ましてや、人に「片付けなさい!」なんて言われたりすると、余計にモチベーションが上がらないですよね。
でも実は整理収納って「なぜ、片付けるのか」「片付けたら生活がどう一変するのか」を理解して実践できたら、単に「スッキリした」以上の効果、お金や時間の使い方が変わったり、家族の関係も好転するような喜びをもたらしてくれるものなんです。

このフルコースでは、みなさんに「もっと早くやればよかった!」と思っていただけるような片付け本5冊をご紹介します。
[本日のフルコース]
整理収納は楽しい未来への投資です!
これを読めば今すぐ家を片付けたくなる本フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

【図解】トヨタの片付け
OJTソリューションズ  中経出版

トヨタが実践している「片付け」メソッドを解説する図解本。「整理・整頓・習慣化」という片付けに必要なステップが論理的に書かれており、職場のみならずご家庭でも取り入れやすい片付けの基本に忠実な入門本。 

書店ナビ トヨタといえば生産現場での「カイゼン」や、職場環境の「5S=整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)」という独自のルールで知られる職場改善の優等生企業です。
竹部 職場や家庭など、自分以外の人間と共有する空間での片付けの第一歩は、まずルールを共有すること。
「コレコレこういう理由でここにしまうこと」というルールを明確化することが大切です。
そもそも、「片付けなさい!」という指示って非常に曖昧ですよね。
書店ナビ そうなんです! こっちは片付けたつもりでも「まだ散らかってる!」なんて言われたりすると、ますますハラが立つ(笑)。
でも、なるほど、片付けの定義を共有していないから、お互いにストレスがたまってしまうんですね。
竹部 ええ、その点、この本は図解なので誰が見てもわかりやすく、文章も短くて的確です。
企業にとって整理収納はコストと直結するので内容にも説得力があり、家庭の片付けは奥さんに任せがちなご主人にも、「一緒に読まない?」と誘いやすいと思います。

色別の付箋やマーカーのあとが随所にあり、読み返したことがよくわかる。マーカーを使えば大事なところが瞬時にわかるのも、情報の整理術だ。

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

ためない練習
名取芳彦  三笠書房

僧侶である著者が仏教の教えを取り混ぜつつ、日ごろモノや感情をためがちな方に向けて、それらを減らすためのヒントを与えてくれる本。著者自身も片付けは苦手なようで、苦手目線からの優しい口調がとても読みやすい。

書店ナビ 著者の名取さんは、密蔵院のご住職。同じ出版社から出した『気にしない練習』がベストセラーになりました。
竹部 整理収納というと「~術」のようなテクニックを思い浮かべがちですが、実はその前に理解したいのは「モノとココロはつながっている」ということ。
「いつか使うかも」とか「買ったときは高かった」というモノへの執着こそが、ためこむ原因になっているという名取さんの指摘にハッとさせられます。

『「休日にまとめて」はやめよう』とか『まずは「十個」減らすことから始めよう』という"スモールステップを大事にする"提案にも、これならできるかも!と勇気をもらえます。
書店ナビ ちなみに竹部さんは本書をキンドルで読まれたとか。そこにも、モノとしての本をいたずらに増やさないポリシーを感じます。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

新 ガラクタ捨てれば自分が見える
カレン・キングストン  小学館
「ガラクタ」=不要物を人はどうしてためるのか? 捨てることの重要性、捨てたことによるさまざまな効果、その方法について、風水をベースに実例を織り交ぜながら紹介する。風水は苦手という方もうなずける内容。

竹部 私自身は特に風水に傾倒しているわけではないんですが、カレンさんの本は自分では言語化できなかったモヤモヤを、「そうだったのか!」と言い当ててくれるような爽快さがあり、たちまちファンになりました。

「衝撃」と書かれた付箋のページを開くと、「人生にちょっとだけ立ち寄った多くのもの」への言及が。

竹部 このページで一番印象に残ったのは、モノ=「ガラクタ」に執着するのは手放すことが怖いから、というくだりです。

「愛と恐怖は同じ空間に共存することができないので、あなたが恐怖心のためにものを溜め込んでいる限り、そこには愛が入り込む隙間がありません」。

これを読んだときは文字通り"衝撃"で、整理収納の真髄を教えてもらった気がしました。
モノがたくさんあることにマヒしてしまっている人は、ぜひ読んでほしい。何度読んでも新たな気づきを与えてくれる、整理収納のバイブルのような一冊です。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

エッセンシャル思考
グレッグ・マキューン  かんき出版
やりたいコトや欲しいモノなど「コト」や「モノ」が多すぎると時間を奪い、本当にやりたいことができなくなる。やりたいことに集中できる生き方を実現するには、「モノ」だけでなく「コト」の整理も大切と呼びかける名著。

書店ナビ 本書の原作は2014年にアメリカで出版され、多忙なニューヨーカーたちの絶大な支持を集めたベストセラー。同年末に日本でも翻訳され、2015年の『ビジネス書大賞』書店賞を受賞しています。
モノとココロの関係が密接であるということは触れてきましたが、今度はそこに「コト」も入ってきました。
竹部 ビジネス書なので、コストや時間管理を含めて「成果を出すにはどうすればいいのか」という非常に現実的な視点がベースにありますが、自分の人生に「選ぶ力を取り戻す」という意味では、幅広い方にうったえかける本だと思います。
例えば、「(自分で)優先順位を決めないと他人の言いなりになってしまう」とか、「何かを選ぶことは、何かを捨てること」という提言は、「モノ」だけでなく人づきあいや気遣いなどの「コト」にも十分当てはまりますよね。

私もこの本を読んでから、以前は無条件で手を伸ばしていた試供品を受け取らなくなったり、あまり乗り気になれない集まりに声をかけられたときは、やんわりとお断りできるようになりました(笑)。
書店ナビ 「選ぶ力」とは、すなわち自分の人生を自分の手に取り戻す、ということなんですね。まさに「essential(本質的な)思考」、読みたくなりました。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

ふだんの部屋にちょっと手をいれたらステキになりました 
川上ユキ  大和書房

モノを減らしてスッキリすると、次はインテリアで部屋をランクアップしたくなるもの。そんな時の参考になる一冊。どうやるとすっきり見えるか、フォーカスポイントの作り方など具体例がたくさん載っていて、心が弾む!

竹部 精神的なところから見つめ直す本が続いたので、最後はちょっと気持ちがアガる、片付け&インテリアのアイデア満載の本にしました。
あ、だからといって「かわいいインテリアを増やしましょう!」という話ではないんです。
整理収納アドバイスをしていると、よく聞かれる質問が「(整理してできた)この空間には、何を置けばいいんでしょう?」。
何も置かなくていいんです(笑)。その余白こそがスッキリした空間を際立たせてくれます。
本書を読めば、モノを増やさなくてもおしゃれな空間がつくれる"片付けの仕上げ"をワクワクしながら楽しめます。

本書のアイデアを実践した竹部邸洗面所の壁一面ペイント。全面を黄色にすると"やりすぎ"だが、一面だけだと明るくかつ上品な印象に。

ごちそうさまトーク 夫婦仲も円満に!笑顔を生む整理収納マインド

書店ナビ ご自宅兼モデルハウスで開く「収納見学会」のほか、小学生親子を対象にした教室や企業向けセミナーなど、活動範囲を着実に広げつつある竹部さん。
特に思い出に残っている指導事例はありますか?
竹部 収納に対する苦手意識から"どこから手をつけたらいいかわからない"奥様と、そんな奥様に一言言いたいけれどもケンカもしたくないというご主人のご夫婦。
お二人同時にカウンセリングさせていただいたところ、「本当はこうしたかった、こうしてほしい」という本音が出てきて、その解決に向けた整理収納のご提案で、最後は見違えるようなお宅に生まれ変わりました。

なによりうれしかったのは、カウンセリングにあまり乗り気でなかったご主人から「整理収納にかける費用は、未来への投資なんですね」というありがたい一言をいただけたこと。
整理収納の力で家族の関係も変わりますし、人生そのものが変わっていく。こういうお客様の笑顔を、これからも増やしていきたいです。

2018年7月から各家庭にある不要品のリユースを促進する団体「モノバンク札幌」を立ち上げた竹部さん。第一回の無料回収イベント「モノドライブ」で集まった食器類は、南平岸商店街のこども食堂に寄付され使われている。

書店ナビ お話を聞いているだけで、いますぐ家に帰っていらないものを捨てたくなりました。ものを減らし、その価値を増やしていく収納整理マインドのフルコース、ごちそうさまでした!!

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●竹部礼子(たけべ・れいこ)さん
札幌出身。北海道大学工学部建築工学科卒業。ゼネコンを経て住宅メーカーのスウェーデンハウスに転職。退社後、2015年から「リブラク」の屋号で整理収納プロデュース業をスタート。二級建築士。整理収納アドバイザー1級。整理収納アドバイザー2級認定講師。
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