おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第332回 有限会社シーズ 弘中 雄也さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や出版・書籍関係者が 腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。 おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。 好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.97 有限会社シーズ 弘中 雄也さん

6月2日に発売されたばかりのシーズ初書籍『サカバナ』を持って

[本日のフルコース] 祝・初出版『サカバナ』で盛り上がる! 「酒のつまみに読める本」フルコース

[2017.7.10]

書店ナビ 札幌の有限会社シーズは、コピーライターの山本公紀さんが1989年に立ち上げた編集・デザインプロダクション。 3名のライターと6名のデザイナーを有する機動力を活かして、地元求人誌をはじめ雑誌・フリペの誌面や広告を制作。取材対象者のいきいきとした姿をとらえる誌面づくりに定評があり、2018年には創業30年の節目を迎えます。 そのシーズさんが今年6月2日、初の自社レーベル本を出版!「酒にまつわるエッセイや路地裏感漂う小説、呑兵衛の言い訳、何の役にも立たない泥酔記録」などが詰まった変わり種の"つまみ"本『サカバナ』が、いまSNSや夜の酒場でじわじわと話題を集めています。 まずは長年あたためてこられた企画の無事出版、おめでとうございます! 社を代表して、山本さんが頼りにする社歴16年のライター、弘中雄也さんにフルコースづくりをお願いしました。 『サカバナ』を出すくらいですから、代表の山本さんの酒場好きは知られていますが、弘中さんもやはり、いけるくちですか?
弘中 晩酌はほぼ毎日です。自分で酒のさかなを作るのも好きで、それをつまみながら焼酎を夜中までだらだらと飲んじゃいます。 『サカバナ』、すみません、先に言っちゃいますが《魚料理本》に入れさせてもらいました(笑)。たくさんの方にご協力いただいて出来上がった本なので、少しでも多くの人に知ってもらえたらうれしいです!
[本日のフルコース] 祝・初出版『サカバナ』で盛り上がる! 「酒のつまみに読める本」フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185 瀬尾幸子  池田書店 酒の肴を紹介したレシピ本はたくさんありますが、その中でも一番自分の好みに合っているのが本書です。手間がかかりすぎず、かと言って簡単すぎない。ちょっと凝っている風に見えるレベル設定がナイスです。

書店ナビ 著者の瀬尾幸子さんは「ちゃちゃっと作ってホッとできる」家ごはんや「おつまみにもおかずにもなる一品」がお得意の料理研究家です。
弘中 この本はコンビニでも置かれていたので爆発的に売れて、僕も出てすぐの頃に買った記憶があります。調理法を三つに絞り込んでいるシンプルさがいいですし、読みたくなるレイアウトもいい。 クリームチーズのわさびしょう油とかも作りました。いつまででも食べていられます。

「瀬尾さんのレシピは、"材料がなかったら他のを使ってもいいんですよ"というざっくりとしたところが好き。作ろうという気にさせてくれます」

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

手作りの味 塩辛づくし 内山高典・室橋裕和  雄鶏社 市販されている塩辛はどうも甘すぎて好みじゃない。「じゃあ、作ればいいでしょ?」と言われて、手に取った一冊です。一冊丸ごと塩辛というマニアックさがよくて、塩辛を味わう描写も秀逸。酒が飲みたくなります。

書店ナビ やはり酒のさかなといえば、塩辛ですよね。同感です。 『サカバナ』でも、他の執筆者の方々は泥酔体験や酒場エピソードを披露しているところを、弘中さんはひとり、淡々と「呑兵衛料理手帖ーー塩辛をつくるーー」と題して、マイ・塩辛調理法を書いています。
弘中 酔っぱらい話は他の人たちにお任せして、自分は変化球でもいいのかなと。鮨屋さんから聞いたおいしい “隠し味”についても書いています。

『サカバナ』の弘中さんページ。イカと魚のさし絵は4歳のときの娘さんが描いたもの。

『塩辛づくし』には全国のご当地塩辛一覧も掲載。広島県はカキ、静岡県はホタテや白魚…読んでいるだけでノドが鳴る。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

サカバナ 中西出版・シーズ編集部 シーズ初めての出版書籍です。原稿は、道内在住のライターやイラストレーターなど酒場を愛する人たちにお願いして書いてもらいました。面白がっておつきあいしてくださったみなさんに心から感謝しています。

弘中 自分たちで本を出したいという企画はもともと、うちの大将(山本さん)が5年くらい前に言い出しまして、じゃあ、どんな本を出そうかと考えたときに、やっぱり自分たちには酒場の本しか書けないことに気がついたんです。 そこから身近な人に声をかけて原稿を集めて、自社のデザイナーの佐藤(愛弓)が通常の仕事をしつつ、頑張ってここまで仕上げてくれました。 「酒飲みってなんかニクメナイよね」とか「酒場っていいよね」という僕らの気持ちが読者の皆さんに伝わっていればうれしいです。
弘中 本をまるまる1冊作る経験も初めてだったので、すみずみまで遊びたくて巻末にはコースターをつけて(コップじみは何度も実験を重ねました)、Tシャツやオリジナルラベルのビールも作りました。帯と本文に登場するこの寝姿のおじさんですか?たまたま見つけた人です(笑)。この場を借りておじさんにも御礼申し上げます
書店ナビ クライアントワークとは一線を引く自由さは、本文やカバー、帯を含めほぼ全ての書体を「筑紫書体」で知られる書体デザイナー、藤田重信さんの書体しばりで作ったところにも表れていますね。 なにより、山本さん自身がつけた本のキャッチコピー「二日酔いのような読後感。」が、本の世界観を見事に言い表しています!
弘中 ありがとうございます。今回ご協力いただいた皆さんとの人脈や社内のマンパワー、そして今言っていただいた山本渾身のコピーも含めて『サカバナ』は、僕らシーズの集大成。そう、胸を張って言える1冊になりました。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

酒とつまみ  酒とつまみ社 酒好きな人たちがあーだの、こーだの言っている酔狂な一冊。「山手線一周酩酊マラソン」など、おバカな企画がもりだくさん。でも、そこが良い。2011年7月に最新号の14号(A5判・80P 本体381円+税)が出版されて、いまはお休みのようです。

弘中 『サカバナ』も少なからず影響を受けている本で、見つけてきたのは山本です。酒場での、酔っぱらったおじさんたちの会話を立ち聞きしているような面白さとしょうもなさに満ちています(笑)。 中島らも高田渡安部譲二なぎら健壱…と各界の酔いどれたちのロングインタビューのほか、前菜本『おつまみ横丁』の著者、瀬尾さんのコーナーも掲載。瀬尾さんのお宅で酒盛りを開き、瀬尾さんはひたすら酒のつまみを作り続けるという、夢のような企画です。 文章も臨場感たっぷりで、『おつまみ横丁』を見たときもあの瀬尾さんが書いたのなら、と思って迷わず買いました。     

広告まで酒飲みのための情報に徹底している『酒とつまみ』。「編集部宛てに『サカバナ』の献呈本を送りました」

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

北の国から'98 時代 倉本聰  理論社 反則技を承知で…国民的ドラマ「北の国から」のシナリオ本です。でも、本当に愛用しているのはDVD。酒を飲んで柔らかくなった心にグングン刺さります。

書店ナビ 飲みながらつい、繰り返し観てしまう映画やドラマ。弘中さんの場合は、それが「北の国から」なんですね。
弘中 DVDを買ってパソコンにも入れちゃってます。シリーズのなかでもお気に入りは「'98 時代」。蛍の結婚式で草太兄ちゃんの録音されたスピーチが流れる場面が号泣ポイント。 そういえば、倉本さんの講演会では黒板家の"その後"のエピソードが語られているそうで、決してハッピーエンドではないと聞きました。視聴者を甘やかさない倉本さんらしいなと思います。

ごちそうさまトーク 目指せ、完売!お中元にもぜひ!

書店ナビ シーズ編集部初の書籍『サカバナ』発売後は、Facebook「サカバナノサカバ」(sakabana.com)で、あまり大声では教えたくないような隠れた名酒場をこっそり紹介中。 『サカバナ』、これからどんどん盛り上がっていきそうですね。
弘中 シーズの僕らもそうですが、皆さんのお力を結集してできた本でもあるので、ここまできたら「完売しました」と言ってみたい!ビールがおいしい夏のお中元にもピッタリの『サカバナ』、どうぞよろしくお願いします!

「私たちが作りました!」山本さん(右端)の誕生日祝いの酒席でパチリ。

書店ナビ 酒飲みに「北海道からこんな"酔い本"が出たから、また今夜も飲んじゃおっか」といううれしい口実をくれるフルコース、ごちそうさまでした!
●有限会社シーズ http://www.cs-sapporo.com/ ●弘中雄也さん 札幌出身。大学時代からシーズでアルバイトをし、2001年に入社。代表の山本公紀さん、上坂竜彦さんら3人でライティングを担当。家庭では5歳の娘さんのよきパパでもある。
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