5冊で「いただきます!」フルコース本 北海道書店ナビ

書店員や出版・書籍関係者が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

第263回 フィジカル・コミュニケーション・デザイン協会 代表 安部 尚登さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や編集者が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。 おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。 好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.39 フィジカル・コミュニケーション・デザイン協会 代表 安部 尚登さん

北海道のビブリオバトル普及に力を注ぎ、講師経験も多数ある安部さん。取材協力はマルヤマクラス2階のカフェ「ライナーノーツ」さんです。ありがとうございました。

[本日のフルコース] 読書体験を分かち合う楽しさを、あなたと。 「ビブリオバトル本」フルコース

[2016.3.7]

書店ナビ フィジカル・コミュニケーション・デザイン協会の代表、安部尚登さんは、北海道での知的書評ゲーム「ビブリオバトル」普及に力を注ぐ応援団のお一人です。過去のビブリオバトル取材でも何度もご協力いただきました。 今回もフルコースづくりをお願いしたところ、やはりテーマはビブリオバトル。安部さんをそれほど魅了するビブリオバトルの面白さとは何ですか?
安部 読書体験の共有を通じて、周りとコミュニケーションするところです。ただ「本を読んで楽しかった」という個人の体験で終わるのではなく、その楽しさを分かち合うところに惹かれています。 皆さんにもぜひ一度体験していただきたくて、やさしいハンドブックから学園小説風のものまで、さまざまなビブリオバトル本を持ってきました。
ビブリオバトル公式ルール〉 1 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。 2 順番に一人5分間で本を紹介する。 3 それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2?3分行う。 4 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めたものを『チャンプ本』とする。 [本日のフルコース] 読書体験を分かち合う楽しさを、あなたと。 「ビブリオバトル本」フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

ビブリオバトル ハンドブック ビブリオバトル普及委員会  子どもの未来社 フルコース5冊中、最も版型が小さくてページ数も少ないので《前菜》に最適。ビブリオバトルのルールやよくある質問、さまざまな開催事例、観戦時用のメモまで付いている初心者本です。

安部 ビブリオバトル普及委員会が出した公式ハンディガイドのようなもので、本誌の76ページには私が考案した「ビブリオバトル・カード」も紹介されています。
書店ナビ それはすごい!以前そのカードを使ったビブリオバトルを取材させていただきましたが、カードを発表者に渡すことでいい記念にもなりますね。

イベント型やコミュニティ型とも異なる“第三のワークショップ型ビブリオバトル”の開催を続ける安部さん。ワークショップの活気を生み出すためにも、カードはいいツールになる。

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

ビブリオバトルを楽しもう―ゲームで広がる読書の輪  粕谷亮美  さ・え・ら書房 イラストや写真がたくさん載っていて「ビブリオバトルの楽しさ」がよく伝わる本だと思います。小学生と図書館司書さんの会話スタイルなので読みやすく、子どもから大人まで楽しめます。

書店ナビ 小学生もビブリオバトルはできますか?
安部 個人差もありますが、高学年なら大丈夫。小学生に5分の発表は難しいと思うので、「3分ルール」にしてやることはあります。ただそのときも「正式には5分なんだよ」と伝えて、公式ルールがあることも広めるようにしています。 2015年10月には三笠市教育委員会の主催で、萱野中学の生徒さん18人に初めてのビブリオバトルを体験してもらいました。3人1組になって、先ほどご紹介したカードも使いました。皆さん、とても楽しんでくれたようです。 教育委員会が関心を持ってくれると普及に弾みがつくので、関心がある自治体の方はお問い合わせいただければ、と思います。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

空白の五マイル

ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム 谷口忠大  文藝春秋 著者はビブリオバトルの考案者である谷口忠大先生(立命館大学情報理工学部 知能情報学科 准教授)で、ビブリオバトルについて知りたいのなら絶対にハズせない1冊です。特に第二章の「ビブリオバトルはどうして生まれたか?」は、ビブリオバトルを本質的に理解するうえで大変重要だと思います。

安部 まさに考案者にしか書けない内容がぎっしりで、もとは京都大学の研究室で「自主ゼミのテキスト選び」のために始まったことや、その後の発展の経緯など、今日に至るまでが詳しく書かれています。
書店ナビ 途中、ちょっとライトノベル風に大学生たちがどうやって実施しているかを再現するくだりもありましたね。
安部 これは想像ですが、谷口先生がそういうタッチで書きたくなったのかもしれません(笑)。いずれにせよ、ビブリオバトルは参加者全員がポジティブな姿勢、「相手の本を批評してやろう」ではなくて「自分の知らない本と出会いたい」という前向きな気持ちから生まれたものであることが、誕生秘話を読めばよくわかります。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

翼を持つ少女 BISビブリオバトル山本弘  東京創元社  中高一貫の美心国際学園(BIS)ビブリオバトル部を舞台に繰り広げられる学園ドラマ小説。主人公たちが何度もビブリオバトルをして、さまざまな本を紹介し続けます。291ページから294ページにかけての「ビブリオバトルの弱点」についての記述は、必読です。

書店ナビ 学園ドラマにもなっているんですね!ビブリオバトル
安部 2016年度の中学生国語の教科書にもビブリオバトルが登場しますし、人気少年マンガ電波教師』でもビブリオバトルが出てきたりと、中高生の間でも徐々に認知度が高まりつつあります。
書店ナビ もとは大学生まれのゲームなので、次は中高生たちにも。もちろん学校以外の職場や会社の研修、地域のコミュニティなどさまざまな場面に活用できるところも、ビブリオバトルの魅力ですね。 紹介文で気になった「ビブリオバトルの弱点」は、これから読む方のためにそっとスルーします。読んでのお楽しみ、ということで。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

ビブリオバトル入門 ビブリオバトル普及委員会  情報科学技術協会 他の4冊に比べて入手しにくく、掲載されている内容もいささか古いのですが、各地のビブリオバトル主催者たち(当時)の対談が掲載されており、ビブリオバトルが本格的に普及し始めた2012年頃の状況がよくわかります。

書店ナビ 各地の主催者が集まった対談には安部さんも登場されています。いま、北海道の普及はどういう状況ですか?
安部 室蘭工業大学やはこだて未来大学、北海学園大学拓殖大学北海道短期大学等の各大学ではゼミやクラブ単位で活動を続けており、江別大麻座商店街のように町おこしの一環として開催するところや、趣味で楽しむ社会人サークル「さっぽろビブル」もあります。 大がかりな会場や用意がいらないゲームなので、皆さんのまわりでもお友達と一緒に気軽に始めてみてください。
書店ナビ いつか北海道書店ナビでも企画してみたいです。

考案者の谷口氏を囲んだ対談で安部さんも積極的に発言している。

ごちそうさまトーク 新ゲーム「しつもんけん」を考案

書店ナビ コミュニケーションをより豊かにするためのゲームとしてビブリオバトルに着目する安部さん、「しつもんけん」という新たなゲームも考案されたとか。
安部 質疑応答が豊かになるゲーム「しつもんけん」は、発表者の短いアイデアに対し、質問を重ねることで参加者全員が理解とコミュニケーションを深めていくゲームです。より多くの質問をした人、より多くの質問に回答した人ほど高い得点を獲得できるなどのゲーム性も備えています。 詳しくは、私のサイトをご覧ください。
書店ナビ ビブリオバトルにもしつもんけんにも共通するのは、「豊かなコミュニケーション」というキーワード。分かち合う喜びに彩られたフルコース、ごちそうさまでした!
●知的書評合戦ビブリオバトル公式ウェブサイト http://www.bibliobattle.jp/ ●安部さんが代表のフィジカル・コミュニケーション・デザイン協会 http://www.p-cd.org/
2015年5月から北海道書店ナビは書店員さんや編集者の方にお願いしています、「お好きなフルコースを作ってみませんか?」と。素材はもちろん皆さんが愛する本を使って。 《前菜》となる入門書から《デザート》として余韻を楽しむ一冊まで、フルコースの組み立て方もご本人次第。 読者の皆さまに、ひとつのテーマをたっぷりと味わいつくせる読書の喜びを提供します。