5冊で「いただきます!」フルコース本 北海道書店ナビ

書店員や出版・書籍関係者が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

第270回 北大生協院生組織委員会 委員長 岩田 渉廣さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や出版・書籍関係者が 腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。 おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。 好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.46 北大生協院生組織委員会 委員長 岩田 渉廣さん

親子二代の北大生である岩田さんは現在、修士2年。「父は工学部、僕は法学部に進みました」

[本日のフルコース] リーガルマインドを学ぶ北大生が選んだ 「法律があなたの身近になる本」フルコース

[2016.4.25]

書店ナビ 北海道大学には学生から学生へと発信するさまざまな活動グループがあり、北大生協院生組織委員会もそのひとつです。 毎年、書評誌「ほんでないかい」と広報誌「いんでないかい」を制作・発行し、学内で無料配布しています。 現在、代表を務めているのは、岩田渉廣(たかひろ)さんです。
岩田 今メンバーは約10名いて、皆で集まって企画を決めています。2015年の「ほんでないかい」は、文系・理系別の院生オススメ本や生協書籍部について詳しく紹介し、巻末では全国教職員委員会委員長の玉真之介先生へのインタビューも行いました。 こうした冊子づくりを含め、普段の学生生活ではできない活動を皆で楽しみながら続けています。

手に取りやすいA6サイズの「ほんでないかい2015」。毎年11月に約800部発行される。

書店ナビ 今回は岩田さんにフルコースづくりに挑戦していただきました。大学院法学研究科の修士課程で勉強中の岩田さん、やはりテーマは…。
岩田 はい、法律です。大学院に進むとだんだん自分の専門分野以外の本は読まなくなりがちですが、法律は研究分野や学年に関係なく、学生のうちから知っておきたいこと、困ったときに自分を守ってくれる情報がたくさん詰まっています。 あまり高価でなく、学生でも手に入る価格帯を意識しながら5冊選んでみました。
[本日のフルコース] リーガルマインドを学ぶ北大生が選んだ 「法律があなたの身近になる本」フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

日本国憲法を口語訳してみたら 塚田薫  幻冬舎 日本の法律の基礎といえば「日本国憲法」。小学校でも習ったけど、堅苦しい文言で読む気がしない…。そんな人におススメなのがWEBでも話題のこの一冊。難しい文言も大学生チックな言葉遣いにすると、あら不思議(笑)。楽に解りやすく日本国憲法を知りたい人は必携!

書店ナビ 著者の塚田さんは本が出版された2013年当時、愛知大の法学部生。先にネットの掲示板に「日本国憲法を口語訳してみた」というタイトルで書き込みをしたところ、大反響を得てその後書籍化されました。 ちょっとチラ見せしますと、第2章第9条の「戦争の放棄」の原文「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」は、この本ではこうなります。

若者ことばに置き換えられた「戦争の放棄」の記述。

岩田 ここまで意訳していいのかという賛否両論はあると思いますが、近年活発になっている学生デモでも、この本の言い回しをプラカードに使う団体があるほど、日本国憲法を身近に感じさせてくれた功績は大です。後半は法律に関するコラムになっています。

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

法むるーむネット 高校生からの法律相談  法むるーむネット  清水書院 高校生視点で様々なトラブル解決に一役買う本。誰もが一回は経験する?であろう9つのトラブルに絞って、法律がどう関わっているのかをストーリーで解説。ルール(法律)がない場面やフェア(公平)とは何かまで、誰が読んでもイメージが掴める本。

岩田 僕、2011年4月に北大に入学したんですが、このとき、僕のような道外からの新入生は震災の影響で保護者同伴がなく、一人で新生活の準備をしなければならなかった人がすごく多かったんです。 住まいのことやモバイル契約など、未成年は親の承諾が必要な契約書を何枚も自分で書いて、なかには店頭から店員さんが親と電話でやりとりして承認してもらう場面もありました。
書店ナビ ほんの1カ月前までは親の庇護のもと暮らしていた10代がいきなり社会との約束である契約を幾つも交わしていく…さぞ不安だったでしょうね。
岩田 震災はちょっと特別な例かもしれませんが、スマホのトラブルやはじめてのアルバイト、自分で作った歌が勝手に使われていたら?などの「いつ降りかかってきてもおかしくない」トラブル対策は、自衛のためにもぜひ知っておいてほしいと思い、この本をいれました。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

わかる!楽しい!法律   反町勝夫  東京リーガルマインド 法律と日常生活との関係がよくわかる本。「法律は血液」というフレーズのもと、法律そのものの役割から法律・六法の読み方、裁判所の役割など、「司法」についてじっくり、しかし気軽に楽しく学べて、法律が一気に身近になる! 

書店ナビ 著者は株式会社東京リーガルマインド(LEC)の創立者。いわば教えるプロがひもとく指南書というイメージでしょうか。
岩田 堺雅人主演のドラマ『リーガル・ハイ』を見ていた方はおわかりになると思いますが、裁判に勝つには「争点をどこに置くか」「どの法を使うか」が大きく勝敗を左右します。 そのためには本書などを手がかりにして基本的な法律の役割から知る必要があり、その後徐々に法律の読み方を深めていきます。 ちなみに法学部のテストはすべて記述式。学生によってどの法律を使って論じるのかが異なるため、テスト後に「何条使った?」なんて聞き合うこともあります。「え?そっち、使ったのかー」なんて驚いたりして。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

法律の使い方 柴田孝之  勁草書房 法学初心者のみならず法学部生やロースクール生も一度は読んだほうが良い本。学んだ(インプットした)法学を、どう使う(アウトプットする)かについて考えさせられる。この本の内容を理解・実践できたら、法曹でなくても「法律のプロ」と言えるかも!

書店ナビ 法学を勉強していると、友達やお身内の方の相談にのること多くないですか?「こういうの、法律でどうにかならないの?」とか。
岩田 あります、あります(笑)。わかる範囲で答えていますが、そういうときでも大切だなと思うのは「法律を適切に使う」ことの重要性。リーガルマインドとも言われています。 僕は将来、国際機関勤務志望で、そのためには企業で実務経験を積む必要があります。法という道具を駆使して、実社会のニーズにあわせてどう調理していくか。もともと「どの職域に進んでも法律を知っていれば自分の武器になる」と思い、入った法学部でした。大学院修了後は法律を学んだ成果を社会に還元していきたいです。

栃木県出身。誘われて入った院生委員会だったが、「いまは冊子づくりを通していろんな先輩のお話を聞けるのが楽しいです」

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

法律の抜け穴全集 法律書編集部  自由国民社 日常生活のあらゆる場面において、法律をどう使えば自分にとって有利になるのかがよく解るHow to本。脱税と節税とは全くの別物であるように、法律においても、違いというものが分かる人になれるはず。実際にトラブルに巻き込まれた時も、一度は読んでみる価値あり!

書店ナビ 表紙のイラスト人物が明らかにワルそうです。しかもキャッチコピーが「悪用は厳禁です」。
岩田 《デザート本》なんで、ちょっとこれくらいフザけてもいいかなと。でも内容は全ジャンルを横断した、非常に使える情報がもりだくさんです。ご自分に関係があるところだけ拾い読みしても、十分ためになると思います。

ごちそうさまトーク 被害者にも加害者にもならない

書店ナビ 法律って「私たちのため」にあるんですね。
岩田 ええ、一部の法学者のためのものではなく僕たち皆のもの。僕自身の研究テーマである国際法における条約も、世界各国の公平性を考えて生まれたものだということが、研究していくとよくわかります。 あと、もうひとつお伝えしたいことは、法律が身近に感じられるようになると、「もしかすると自分も加害者になるかもしれない」可能性に気づかされます。その視点って実はとても大事ですよね。
書店ナビ なるほど。「私のもの」であり「あなたのもの」でもあるのが、法律ですものね。自分が被害者にも加害者にもならないための法律本フルコース、ごちそうさまでした!
●北大生協 院生組織委員会 http://www2.hokudai.seikyou.ne.jp/~insei/
2015年5月から北海道書店ナビは書店員さんや編集者の方にお願いしています、「お好きなフルコースを作ってみませんか?」と。素材はもちろん皆さんが愛する本を使って。 《前菜》となる入門書から《デザート》として余韻を楽しむ一冊まで、フルコースの組み立て方もご本人次第。 読者の皆さまに、ひとつのテーマをたっぷりと味わいつくせる読書の喜びを提供します。

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