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第436回 北の出版人・北の本@滝川市立図書館レポート

[イベントレポート]
札幌の出版社7社が語る!
滝川市立図書館連携企画「北の出版人」出張トーク

[2019.7.29]

好評企画の第三弾in滝川、図書館との連携も初

札幌市の出版社が協力して取り組むトークイベント「北の出版人」は、2018年11月、江別蔦屋書店開店初の催しとして誕生した企画である。

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さまざまな切り口で編まれた北海道本の魅力や制作過程を発信するこのイベントは、「札幌にこんな出版社があったなんて」「編集者の苦労や思いがわかり面白かった」と好評を博し、「これ一度で終わりたくない」出版社サイドも継続を決定。

2019年4月20日には紀伊国屋書店札幌本店で第二回が開催された。
そこに聴衆の一人として来ていた滝川市立図書館の深川清美館長が「ぜひ滝川でもやってほしい!」と声をかけ、7月13日日曜に「北の出版人・北の本~どさんこ出版人たちの熱き想い~」と題した第三回目が実現した。

参加出版社は亜璃西社、共同文化社、寿郎社、中西出版、柏艪舎、北海道新聞社出版センター、北海道大学出版会(株式会社省略)。
「北の出版人」が図書館と連携するのはこれが初となる。

会場は図書館が2階に入っている滝川市役所の1階ロビー。約20名が集まった。

図書館にもコーナーを設置し、身近な道内出版社をピーアール。

進行役を務める深村館長が「皆さんが編集者になったきっかけは?」と問うと、誰ひとりかぶらない"七人七様"の回答で会場に笑いが起きた。

「もとは自主映画を作っていて、映画好きな当社の和田(由美社長)に拾ってもらった"もぐりこみ"パターン」亜璃西社 井上哲さん

「親会社が印刷会社のアイワード。去年から編集を兼務し、本づくりの醍醐味を勉強中」共同文化社 竹島正紀さん

「学生時代は学生の労働運動に力を入れていたので(雇用側に煙たがられて)"きっと就職できない"と思っていたところを寿郎社の関係者に紹介していただいた」寿郎社 下郷沙季さん

「憧れで入った出版業界。メインの仕事は営業ですが苦境にあるこの業界が成り立っていけるビジネスを探したい」中西出版 河西博嗣さん

「札幌で翻訳学校を運営する親が立ち上げた出版社。自費出版の『本にしてくれてありがとう』の一言がうれしい」柏艪舎 山本哲平さん

「人事異動で出版センターに。本づくりは7割は苦労の連続。本を売ることの難しさを毎回実感します」北海道新聞社出版センター 仮屋志郎さん

「北大の院生時代に先生から紹介されて採用に。専門書づくりを通して新しい知識が増えるのがうれしい」北海道大学出版会 今中智佳子さん

2019年7月から現職に就任した深村館長(右端)。「連携」をキーワードに行政内外の組織と手を結び、イベントを発信中。

 自分で本を出してみたい人へのアドバイスになると、持込み先一番人気と言われる北海道新聞社の仮屋さんは「年間の持込み案件数を100だとしたら企画が通るのは1あるかどうか」という厳しい現実を伝えた。
 採算を考えると初版は3000部印刷と言われる出版業界で、「腕に自信あり」あるいは「世に問いたいことがある」だけでは出版社内のゴーサインをもらうことは難しい。

 また「書きためた原稿があればすぐに本になるのでは?」と思うむきもあるかもしれないが、「著者には編集者の視点から見た提案や修正を受け入れる柔軟さが求められますし、編集や装丁などそれぞれの段階を経て"本化"する作業があります」と亜璃西社の井上さんも補足した。

各社のイチオシ本をピーアール、終了後は地元書店を視察

「空知をテーマに本を作るとしたら?」という問いかけには各社が炭鉱史や自然本、空撮の魅力、全国に知られる松尾ジンギスカンの創業者伝などをあげたが、なかでもユニークだったのは中西出版の河西さんの回答。

「当社から丸浦正弘さんの書かれた『ほっかいどうの狛犬』を出したとき、実は空知には全道一狛犬が多く残っていることがわかり、書名を『空知の狛犬』にしようと思ったほど」。
北海道独自の狛犬文化が当地に色濃く残っていることを強調した。

最後に各社が改めてイチオシ本を紹介。

亜璃西社は『南極あすか新聞1987』。南極観測基地「あすか」の越冬隊に医学・医療隊員として参加した高木知敬さんが基地内の暮らしぶりを毎日綴った日刊紙。その手書きの原稿をデジタル復刻した。井上さんが掲げているのが元原稿の拡大コピー。

共同文化社からは2017年に出版した愛らしい写真集『エゾナキウサギ』。全国に4000人会員がいるナキウサギふぁんくらぶのカレンダーを毎年、親会社が印刷している縁で写真集の制作も引き受けることに。「ファンだからこそ撮れた貴重なカットがいっぱいです」。

寿郎社の下郷さんは自身も原稿を執筆した『北海道大学もうひとつのキャンパスマップ』を紹介。2019年6月の出版以来、好調な売れ行きを見せている。
ポプラ並木やクラーク博士といった"鉄板"の話題はあえて外し、アイヌや植民地主義、軍事研究など歴史の影に消えがちな題材を取り上げた意欲作だ。
女子学生の入学を許めた帝大時代の北大にいつ女子トイレが設置されたのか――。驚愕の史実をぜひ本書で確かめてもらいたい。

中西出版イチオシ本は2019年6月出版の『ハスカップとわたし』。「苫小牧のハスカップにまつわる市民史を一冊にまとめた本はこれが初めて」と河西さん。
「広大な北海道は、他の地域で起きていることを共有する機会がなかなかない。"他所に学ぶ"ような企画をぜひ図書館さんで考えてもらいたい」と提言した。

柏艪舎の一冊は、終戦直後に留萌沖で引き揚げ船が撃沈された「留萌沖三船殉難事件」を取り上げた『海わたる聲』(2019年1月出版)。
「元STVのプロデューサーである著者が番組だけでは描ききれなかったという思いで書いた本。生存者の方々やご遺族に丁寧な聞き取りを行い、いまも8月22日の慰霊祭には新たにわかった乗客のお名前を記載した追加名簿を毎年奉納されています」。

北海道新聞社からは2019年6月刊の『さわこのじてん』。重度の知的・聴覚障害がある今佐和子さんと「言葉を交わしたい」と願う母親の美幸さん。「当社の新聞に掲載された美幸さんの読者コラムをきっかけに取材が始まりました」と仮屋さん。自分に名前があることも知らなかった佐和子さんが言葉を獲得する過程や美幸さん手作りの「じてん」が改訂されていくさまを写真で解説した。

最後の北海道大学出版会は、専門書が多い同社ならではの『病原細菌・ウイルス図鑑』。今中さんがことあるごとに存在をアピールする同社渾身の一冊だ。
150人を超える執筆陣が参加した本書は全916ページで、本体価格6万円(!)。病院や大学、研究所など医学の最前線で購入されている。
「ご家庭に一冊とは言いません(笑)。気になる方はぜひ、図書館に購入リクエストをしてください」と呼びかけた。

トーク終了後の販売コーナー。一人で三冊お買い上げになった方もいるという。

今回の企画は地元のTSUTAYA滝川店とも連携し、各社の推し本が書店でも買える[図書館&書店]のタッグが新しい。
イベント関係者一行も「ぜひ現場を見てみたい」と深村館長の案内で同店を視察。自社本の売れ行きに目を配っていた。

TSUTAYA滝川店入口すぐの場所に設置された「北の出版社・北の本」コーナー。TSUTAYAフランチャイズの他にタクシー会社や介護福祉事業など地元で手広く展開する北星グループは、ここ3年間の売上の1%を市立図書館に寄付(約250万円)。図書購入費に充てられている。

イベントを終えた深村館長の感想。
「ご来場いただいた皆様から『来てよかった!』『本に携わるものとして大事な話を聞けました』といった喜びの声を多数聞かせていただきました。
北海道の出版文化を支えていくためにも、作り手の出版社さんと売り手の書店さん、繋ぎ手の図書館の三者が歩み寄り協力し合うことが大事。『読書ってやっぱりいいな』と思ってもらえるような取り組みを、これらかもご提供していきたいです」。

従来の書籍流通システムに限界が見られる昨今、出版社も「作って売る」ところまでの戦略に生き残りをかけてのぞんでいる。
「北の出版人」トークに関心がある図書館や教育機関等の方々は、ぜひ亜璃西社の井上さんにまでお問い合わせを。

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