おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第417回 『手記 札幌に俊カフェができました』出版


[新刊紹介]帯の推薦文はもちろんあの世界的な詩人が!
一ファンが綴る『手記 札幌に俊カフェができました』

[2019.3.11]

どうして札幌に俊カフェが?全ての疑問に答える1冊に

世界的な詩人である谷川俊太郎さん公認の私設記念館を兼ねる「俊カフェ」のオーナー・古川奈央さんが、2019年2月26日、『手記 札幌に俊カフェができました』を出版した。
この日は古川さんの誕生日でもあり、俊カフェで出版記念パーティーが開催された。

手記 札幌に俊カフェができました
古川奈央  ポエムピース

谷川俊太郎さんは1931年東京生まれ。1952年に初の詩集『二十億光年の孤独』を発表して以来、多数の詩集や絵本、対談集、エッセイ、翻訳、脚本、作詞を手がけている。
世界各国にもファンが多く、日本を代表する詩人の一人として知られている。

俊カフェ最大の特徴は、詩人本人が古川さんの「俊太郎さんのものばかりを集めた場所を作りたい」という夢を公認し、稀少本の寄贈や、カフェを紹介する詩「俊カフェ案内」を書き下ろすなど、惜しみない協力をしているところにある。

古川さんの手記の帯に載せる推薦文も、もちろん谷川俊太郎さんが書いている。となると、俊カフェに足を運んだことがない方々には当然、素朴な疑問が浮かぶはずだ。

「古川奈央さんて、谷川さんの親戚か古くからの知人?」
――答えはどちらもNOである。
「フリーライターらしいけど、ずっと前からカフェをやりたかったの?」
――それもNO。
「谷川さんとの間を、誰か仲介してくれた人がいたんじゃない?」
――その答えは半分YESだが、皆さんが想像するような「この人がいたからカフェオープンまでとんとん拍子に話が進んだ」などという便利な足ながおじさんのような人物は存在しない。

こうした疑問を含め、札幌に住んでいる、一谷川俊太郎ファンの古川さんがどうして俊カフェをオープンできたのか、すべての「なぜ?」につぶさに答えているのが、この手記なのである。

2017年5月3日に「俊カフェ」をオープンした古川さん。カフェ経営のかたわら、2018年の3月から谷川氏に呼吸法を教えている加藤俊朗さんのすすめで手記の執筆に取りかかった。俊太郎さんの話を始めたら止まらない。本当に止まらない。

思いの丈を綴る「手記」で出版、推薦文に仕掛けあり

出版記念パーティーには、"古川応援団"とでも呼ぶべき30人を超える、古川さんの友人知人たちが集まった。
乾杯の挨拶は、手記を編集した出版社ポエムピースの松崎義行さんが。古川さんの思いの丈が詰まった原稿を初めて読んだとき、ストーリー性にとらわれず自分の体験を素直に綴っていく「手記」というジャンルで出そうと決めたと、当時を振り返る。

「ただ、手記というのはちょっと地味なジャンル。何も知らない読者に読んでもらえる導入として谷川さんに400字近くの長い推薦文を書いていただいて、帯から気がつけば本文に入っているという仕掛けを考えました」

古川さんが所属する詩作サークル「札幌ポエムファクトリー」の指導もしている松崎さん。

続けてこの日の主役である古川さんが、本ができるまでの一連の流れを紹介した。
関係者に感謝の言葉を伝えたのちに、「俊太郎さんからいただいた大きな二つのプレゼント」と呼ぶ手記の推薦コメントと前述した「俊カフェ案内」を、朗読家の兎ゆうさんにリクエストして朗読してもらう。

谷川俊太郎さんと古川さんを近づけたきっかけに、古川さんの母校である札幌開成高校(現・現・市立札幌開成中等教育学校)の校歌を谷川さんが作詞したという経緯がある。
開成高校50周年の2012年に学校側は、再び谷川氏に記念歌の作詞を依頼。そのときの校長、岩本隆さんが古川さんの高校3年時の担任だったこともあり、記念式典で対面がかなったというエピソードは手記に詳しく書かれている。

岩本さん(写真左)は高校時代の二者面談に、詩人でもあった古川さんの父親が来た話を披露。「広くて、深くて、寛容なオーラが出ている方でした。俊カフェを開けたのは、もちろん本人の行動力もあったでしょうが、やはりああいうお父さんをもっている古川だからできたのではないかと感じました」

詩人への深くて長いラブレター、気がつけば皆が応援団に

再び手記に話を戻すと、この本は古川さんから谷川俊太郎さんへ送る、長い長い、180ページ近くを使った渾身のラブレターだ。
手記の中にはどこを切っても古川さんにしか書けない、宝石のような体験談が綴られている。

通常はオリジナルグッズや詩を取り入れたプロダクトが並ぶ棚も、この日はお祝いの花一色!

編集者の松崎氏が述べたように「古川さんはまず、なんか(好きなことを)始めたなという謎の行動があって、周りがそれに注目するうちに巻き込まれ、気がついたら皆で古川さんの夢を応援し、実現している」。

本書には「私レベルで俊太郎さんが好きな人は全国にたくさんいますので」と書いてあるが、2019年3月時点でじきに開店3年目に突入しようとしている「俊カフェ」が、全国でも札幌にしかないことを思うと、古川さんの"谷川俊太郎愛"が、どれだけ深いものかが見えてくる。

「じゃあ、古川さんをそれだけ夢中にさせている谷川俊太郎さんはどんな作品を書いているの?」
そう思ったのなら、どうぞ明日にでも俊カフェへ。「しめしめ」と思いながら笑顔を浮かべた古川さんが、あなたの来店を待っている。

俊カフェは毎月、小さいお子さんを連れた方を歓迎する「俊カフェこどもの日」も開催中。最新情報はFacebookの「俊カフェ」アカウントで随時更新されているので、ぜひチェックしてほしい。

パーティーの進行役を務めたライターの中村昭子さんと。

古川さんから参加者に感謝を込めたプレゼントがあたるジャンケン大会で大盛り上がり!

●俊カフェ
北海道札幌市中央区南3条西7丁目KAKU IMAGINATION 2F
TEL 011-211-0204
営業時間11:00~20:00 火曜定休
注目記事
(株)コア・アソシエイツ
〒065-0023
北海道札幌市東区東区北23条東8丁目3−1
011-702-3993
お問い合わせ