5冊で「いただきます!」フルコース本 北海道書店ナビ

書店員や出版・書籍関係者が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

第265回 石狩市民図書館 工藤 直揮さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や出版・書籍関係者が 腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。 おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。 好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.41 石狩市民図書館 工藤 直揮さん

3年前に図書館に異動になり、2013年に司書資格を取得した工藤さん。

[本日のフルコース] 開幕直前に読んで応援スイッチON! 「燃える!プロ野球愛」フルコース

[2016.3.21]

書店ナビ 石狩市民図書館さんにフルコースづくりを依頼したところ、司書のお一人、工藤直揮さんが登場してくださいました。 工藤さん、ご協力ありがとうございます。しかも「プロ野球編」と「洋楽編」の2種類もご用意いただいて感激です!
工藤 自分では選べず、つい2つ出してしまいました。
書店ナビ それでは3月25日に公式戦が開幕するタイミングを考えて、「プロ野球」編を中心にお話をうかがっていきたいと思います。 もちろん、最後の「ごちそうさまトーク」で「洋楽編」のラインナップもご紹介しますので、ここをご覧の皆様にはそちらもあわせてお楽しみいただけます。

石狩市民図書館は2000年6月3日に開館。石狩市民以外の利用者にも貸出し可能で、貸出し冊数の上限もないというからすごい。

くつろげる畳スペースを発見。館内には日本の公共図書館で初めて導入された自動貸出機もある。

[本日のフルコース] 開幕直前に読んで応援スイッチON! 「燃える!プロ野球愛」フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた! ?涙と笑いの球界興亡クロニクル? 長谷川晶一  集英社 球団ファンクラブという意外な切り口から見えてくる各球団の個性とその歴史。

書店ナビ 本の解説をうかがう前に、札幌出身である工藤さんご自身のプロ野球チーム応援歴を教えていただけますか?
工藤 昔は道民の例に漏れず何となく巨人ファンでしたが、2004年にオリックスとの合併で球団がなくなり、同じ年に北海道に日本ハムファイターズがやってきた。それ以降は日ハム一筋です。
書店ナビ 前菜本は本のタイトルがすべてを物語っていますが、特に巻末の「12球団別ファンクラブ通信簿」が面白いですね。
工藤 筆者が所属した2005年から2014年の10年間のファンクラブ特典を「コスパ」「冒険」「ラグジュアリー」などの項目別に比較したもので、西武や巨人はオール「A」だとか、横浜DeNAベイスターズはだんだん「A」に上がっていき、逆に日ハムは元気がなくなってきて「C」に…という球団の勢いが見えてきます。日ハム、今後に期待ですね。

「うちの子も日ハム特典のリュックを持っていますが、あんまりモノがよくなくて…」と取材班Kもぼそり。がんばって、日ハム!

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

カープ女子  カープ女子会  アスペクト 近年プロ野球界を席巻している"カープ女子"の実態がこれ一冊でわかる!

書店ナビ 「もみじ饅頭キャップ」や「勝ち星梅干しバッグ」など、球団グッズでも独自路線を貫く広島東洋カープ、やはり「カープ女子」も存在するんですね。
工藤 ここ最近のカープは若手選手が活躍しているので、女性ファンも応援しやすいのかもしれません。同じくカープ愛をテーマにしたコミック『球場ラヴァーズー私が野球に行く理由ー』を描いた石田敦子さんも本書に登場して、熱い内容になっています。 「他のチームに負けるもんか!」という彼女たちの気合いは、さすが"仁義なき戦い"の土地、迫力を感じます。

取材は今年1月。当初は「シーズンオフを乗りきる」ために考えてくれた5冊だったが、いつ読んでも十分面白いフルコースであることが判明した。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

空白の五マイル

八月のトルネード 阿部珠樹  ベストセラーズ スポーツ誌『Number』の連載をまとめた素晴らしい野球ノンフィクション集。道民にはなんといっても2004年夏の甲子園での駒大苫小牧高校初優勝と、2006年北海道日本ハムファイターズ優勝の瞬間を描いた2編が必読。

工藤 駒大苫小牧高校の優勝は、実は2005年のほうが鮮明に憶えていて、ちょうど決勝戦の日、石狩のライジングサンの会場にいたんです。そのうち「おい、駒苫、勝ってるみたいだぞ」という声があちこちから聞こえてきて、会場に出店していた飲食店の小さいテレビに皆が群がって、ステージはそっちのけ状態に(笑)。二度目の優勝をその場にいた全員で喜びあいました。
書店ナビ 2006年の日ハム優勝パレードは行きましたか?
工藤 大通の地下街からパルコ前の出口に上がった瞬間、あたり一面の紙吹雪が降ってきた。今まで見たこともない幻想的な風景に、胸がいっぱいになりました。その感動もあったので、そのあとの小笠原選手の離脱がいっそうこたえたことも憶えています。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史 村瀬秀信  双葉社   2015年も一時首位に立ちながら結局最下位に終わった横浜DeNAベイスターズ。そんなうまくいかないチームに魅せられた著者が、関係者への丹念な取材で浮かび上がらせた笑いと涙の球団興亡史。

書店ナビ 1998年に日本一に輝いた栄光もどこへやら…いつのまにか最弱球団になってしまったベイスターズ。ズバリ、本書では「強くなれない」理由が書いてあるんですか?
工藤 著者がチームの戦力や戦略を冷静に分析して勝利へのヒントを探る、という内容ではなく、一ファンとしての思い入れをたっぷりと注ぎ込んだドキュメント本なので、「これだ!」という答えを見つけるのは難しいかもしれません。 ただ私見も交えて感じたのは、1998年の優勝後、谷繁選手が抜けたことが致命的。谷繁選手以外にも人材をどう残すか、または「残さないか」の判断に甘さを感じました。 と、いろいろ言っても結局は、2016年1月に出た文庫版の帯にある「でも、応援するんだよ!!!」の一言に尽きる。半分自虐的かもしれませんが、どの球団ファンにも通低する心の叫びを代弁した一言だと思います。

左は図書館で貸出ししているハードカバー、右は工藤さん私物の文庫版。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

18連敗の真実 ?なぜ千葉ロッテマリーンズは負け続けたのか? 萩原晴一郎  竹書房 1998年、18連敗という今も破られていない不名誉な記録を作った千葉ロッテマリーンズ。泥沼の中でもがき続けた選手たちと、そんな状況下で逆に数が増加し、懸命に応援したファンたちの約1カ月間に渡るドラマ。

書店ナビ 上の解説を読んだだけでちょっと泣きそうです。
工藤 4連敗、5連敗ならどのチームにもあることですが、「あれ?」「まさか…」「またまた?」と皆が半信半疑でいるうちにズルズルと…。 お祓いをしても負ける、"魂のエース"と呼ばれた黒木が投げても負ける、10点取って「今日こそは!」と一瞬喜んでも11点取られて負け続ける…そのときチームが何を思い、ファンはどう動いたのかは、ぜひ本書でご覧ください。組織論の面でも勉強になる、感動のドラマです。

ごちそうさまトーク 「解散」後も人生は続く

書店ナビ 続けて工藤さんがもうひとつ考えてきてくださったフルコース「洋楽の深みをのぞき見る本」をご紹介します。

前菜

亀渕昭信のロックンロール伝?ビートルズ以前、16歳の僕はドーナッツ盤に恋をした』 亀渕昭信  ヤマハミュージックメディア 「元人気DJでニッポン放送代表取締役だった著者の自伝風ポピュラーミュージック史です」

スープ

『幻のアルバム 失われた音を求めて』 ブルーノ・マクドナルド  シンコーミュージック 「さまざまな理由で存在する『幻のアルバム』から見えてくる音楽の裏面史」

魚料理

『グリンプス』 ルイス・シャイナー  筑摩書房 「幻のアルバムに取り憑かれた男がタイムスリップを繰り返し、その作品を完成させようと奮闘する、音楽好きには究極のファンタジーSF」

肉料理

ザ・ビートルズ解散の真実』 ピーター・ドゲット  イースト・プレス 「題名の"解散の真実"より、むしろ解散しても終わらないメンバーのその後を丹念に追った部分が圧倒的に読ませます」

デザート

『ビニール・ジャンキーズ』  ブレッド・ミラノ  河出書房新社 「レコードというメディアにこだわり続ける人々。その楽しくもディープすぎるコレクターの生態」

書店ナビ こちらも濃い5冊が揃いました。工藤さんのご家族も洋楽派ですか?
工藤 残念ながら自分だけです。でも、私が運転するときのBGMは好きな曲をかけています。「ドライバーがかける曲を決めるんだ」とか言って(笑)。

工藤さんオススメのCDアルバムは図書館でも貸出し中!

書店ナビ 今年ももうすぐ始まる「プロ野球」と、名盤や伝説的なグループの影響が今に続く「洋楽」、それぞれのヒストリーを多彩な角度から慈しむ2本立てフルコース、ごちそうさまでした!
●石狩市民図書館 https://www.ishikari-lib-unet.ocn.ne.jp
2015年5月から北海道書店ナビは書店員さんや編集者の方にお願いしています、「お好きなフルコースを作ってみませんか?」と。素材はもちろん皆さんが愛する本を使って。 《前菜》となる入門書から《デザート》として余韻を楽しむ一冊まで、フルコースの組み立て方もご本人次第。 読者の皆さまに、ひとつのテーマをたっぷりと味わいつくせる読書の喜びを提供します。

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