おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第286回 株式会社ティーツーワイジャム 代表取締役 玉木雅人さん

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や出版・書籍関係者が 腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。 おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。 好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.59 株式会社ティーツーワイジャム 代表取締役 玉木雅人さん

取材協力/玉木さんと同世代の料理人イデゴウさんが腕を振るう「らっきょ大サーカス」。

[本日のフルコース]
札幌名物スープカレーのスペシャリスト選 「好き」が詰まった感動本フルコース

[2016.8.15]

書店ナビ 札幌名物スープカレーについて語らせたら、この方の右に出る人はいないでしょう、後ほどフルコースにも出てきますが2002年に日本初のスープカレー専門誌『カレー賛昧』を出版し、現在はスープカレー全般のコンサルタントとして知られる株式会社ティーツーワイジャムの玉木雅人さんです。 玉木さんがスープカレーと出会ったのはいつですか?
玉木 僕が20歳のころなので、今から27年前でしょうか。札幌の名店「スリランカ狂我国」で初めて食べて「なんだこれは!すごくおいしい!」と衝撃を受けたこと、それから毎日お店に通ったことは今もはっきりと憶えています。 昔から好きなことしかできない性格で、大好きなスープカレーの魅力を広めることを仕事にし、おつきあいのあるカレー店も200店舗近くになりました。 今回のフルコースはカレーに関する本ではありませんが、今年47歳になった僕の人生でぐっときた本を5冊紹介させていただきます。
[本日のフルコース]
札幌名物スープカレーのスペシャリスト選 「好き」が詰まった感動本フルコース

前菜 そのテーマの入口となる読みやすい入門書

銀河鉄道の夜 岩波少年文庫(012)  宮澤賢治  岩波書店 夜の軽便鉄道に乗って天空を旅する少年ジョバンニの心の動きを描いた表題作ほか「やまなし」「貝の火」「なめとこ山のくま」「オッペルとぞう」「カイロ団長」「雁の童子」の7編。幻想性に富んだ童話集。

玉木 中学か高校のときに読みました。小さいころから名前に引き込まれることが多く、この『銀河鉄道の夜』もそう。実に魅力的なタイトルですよね。
書店ナビ 天駆ける星座のイメージやジョバンニとカムパネルラ少年のはかない交流。 宮澤賢治作品の中でも愛読者が多く、宝石のように美しくせつない物語です。
玉木 底抜けに明るい物語よりもほのぐらいものが、楽しい話よりもちょっと物悲しい話が好き。 宮澤賢治の世界観や哲学が詰まった大好きな童話です。

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

オリエント急行の殺人   アガサ・クリスティー  早川書房 ヨーロッパを走り抜ける豪華寝台列車オリエント急行。雪で立ち往生した車内で殺人事件が起きる。そこに偶然居合わせたのが、我らが名探偵エルキュール・ポアロ。「灰色の脳細胞」が事件の解明に動き出す。

玉木 小さい頃から推理小説が大好きで、アガサ・クリスティーの作品は全部読んでいると思います。その中でも『オリエント急行』は別格の面白さ!1974年にシドニー・ルメット監督が撮ったオールスター映画も何度見たことか。 あのとき、ポワロを演じたのはアルバート・フィニー。当時まだ30代で、老けメイクと見事な演技でポアロに命を吹き込みました。
書店ナビ 結末は伏せますが、あっと驚くラストでしたね。
玉木 ええ、自分が推理小説に惹かれるのもその「えっ?」という驚きが待っているから。仕事も同じで、人が考えたこともないことをやるのが好き。 札幌の加盟個人タクシー共通クーポン「こじポン」®の企画も、そんな発想から生まれました。
●こじポン® 

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

めぞん一刻 1 高橋留美子  小学館 1980年から87年にかけてビッグコミックスピリッツに連載された高橋留美子の代表作。木造アパート「一刻館」住人の五代裕作と、管理人としてやって来た若い未亡人・音無響子を中心としたラブコメディー。

書店ナビ 本作を恋愛コミックの決定版だという男性は、特にいま40代の男性は多そうです。理由はもちろん…。
玉木 もちろん、管理人さんです(笑)。亡くなった夫の惣一郎を一途に思い続ける管理人さんは、僕ら男性の理想像。ここぞというときに頼りない五代くんに自分を重ね合わせて、応援していました。 感動のプロポーズの場面は、今でもせりふをそらで言えるくらい。僕の女性観というか結婚観は、この作品に拠るところが大きいと思います。 それに恋愛だけじゃなくて、面白おかしい下宿人たちが入り乱れて楽しませてくれる、シリアスとコメディーのバランスがいい。下宿人たちは皆、一の瀬、二階堂、三越、四谷…と名前に漢字がつくんですよね。何度読んでもいい傑作です。

「僕も登場人物にあやかって、子どもの名前は『春香』にしようと思ったこともありました」

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

金持ち父さん貧乏父さん ロバート・キヨサキ  筑摩書房 高学歴なのに収入が不安定な著者自身の父親と、13才のとき学校を中退した億万長者である親友の父親。対照的な二人の"父さん"を軸に学校教育では教えてくれない「経済リテラシー」を語るビジネス本。

書店ナビ 2000年の発売時には日本中で大ヒット! 以降、「金持ち父さん」シリーズとしてキャッシュフローや投資に特化した続編が続いています。
玉木 僕が広告代理店のサラリーマンを辞め、何もわからないまま会社を起ち上げた直後に読みました。 僕のように「誰かから言われてやる」のではなく「自分で感じたことを形にしたい」タイプは、やりたいことが多くても肝心の資金面でつまずかないような知恵が必要になってきます。 いろんなことにチャレンジするためにも、どうビジネスを展開していけばいいのか。この本を読んだあとに「独立してよかった」と強く感じた、自分を奮い立たせてくれる一冊です。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

至福のスープカレー 玉木雅人監修  コア・アソシエイツ 『まるごとカレー賛昧』は2002年の会社員時代に僕が担当・発刊した日本初のスープカレー専門誌です。その後、企画ごと持って会社を独立し、フリーペーパーを入れてカレー本を45冊出版してきましたが、やはり1冊目が自分の原点。ここで表紙を紹介しているのは、2015年に出した"カレー賛昧シリーズ"の最新刊。カレーにまつわる総合サイト「スパイスビーチ」でも情報を発信しています。

玉木 今日の取材場所を提供してくださったイデさんに初めて『カレー賛昧』の企画を持っていったとき、「こういう本を待ってたんだ。なんでも協力するから」と言ってくださって、固い握手を交わしました。
書店ナビ 札幌市民にはおなじみのスープカレー、今後も知名度をさらに上げられそうですか?
玉木 ラーメンとスープカレーは札幌の食を代表する二大巨頭ですが、「一度も食べたことがない」人が多いのはスープカレーのほうだと思うんです。 ということは、まだ「食べてみたい」と思ってくれる層がいる、のびしろがあるということです。 そう考えると、今の認知度ではまだまだ。これからも多彩な企画でスープカレーの魅力を全国に広めていきたいです。

ごちそうさまトーク "迷子本"探してます。情報大歓迎!

書店ナビ 実は事前にいただく回答シートに「本当は一番入れたかった本があるけれど、書名も作者も思い出せない」と書いてありました。。
玉木 そうなんです。外国の絵本で、こんなお話でした。 いつも子どもたちを微笑みながら見ているおじいさんに、男の子が「どうしていつも笑顔なの?」と聞くんです。でも、おじいさんは笑っているだけで何も答えない。 その男の子はひょっとしたら「おじいさんを笑顔にする宝物があるんじゃないか」と思って世界中を旅する…というお話です。 書店できれいな表紙につられて読んでいくうちに号泣しまして。そのまま買いそびれて、書名も作者も思い出せないんですが一生忘れられない絵本です。いつか絵本を出したい!という夢も、その本からもらいました。
書店ナビ どなたか、お心当たりがある方がいらっしゃったら、ぜひ北海道書店ナビまでお知らせください。 スープカレーの伝道師・玉木さんの心を暖めた感動本フルコース、ごちそうさまでした!
玉木雅人さん 1969年室蘭生まれ。広告代理店勤務を経て、2004年にスープカレーを中心とするコンサルティング会社「ティーツーワイジャム」を起業。スープカレーコーディネーター、こじポンディレクター。近年は起業セミナーや今後は映画制作も目指している。 ●ティーツーワイジャム
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