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第445回 北海道ブックフェス2019「地域の情報拠点」トークレポート

[イベントレポート]
まちライブラリー@千歳タウンプラザ
北海道ブックフェス2019「地域の情報拠点」トークレポート

[2019.10.7]

札幌市図書・情報館&まちライブラリーのクロストーク

毎年9月、道内各地の本好き有志がさまざまな企画イベントを展開する「北海道ブックフェス」(尾崎実帆子実行委員長)。
今年は特に、初の試みとなった「十勝ブックフェス」の大盛況が聞こえてきたが、2019年9月29日、まちライブラリー@千歳タウンプラザでもトークイベント「地域の情報拠点」が開催された。

話し手は、今話題の札幌市図書・情報館の淺野隆夫館長とまちライブラリー@千歳タウンプラザマネージャーの久重薫乃さん、そしてまちライブラリー提唱者の礒井純充さん。
公共と私設の違いはあれど、「情報拠点」としての役割を図書館がどう担っているのか。各自の現状を報告した。

開館1年未満にして来館者数100万人を突破した札幌市図書・情報館の淺野館長には、以前「本のフルコース」取材とあわせて同館の特徴を語っていただいている。

www.syoten-navi.com

日本一の面積を誇るまちライブラリー@千歳タウンプラザの久重薫乃さんは、愛媛県出身。蔵書で成り立つ同館のオープン準備から奔走してきた現場のリーダーであり、「本のフルコース」にもご協力いただいた。

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起業相談や企画持ち込み、まちの動きを作るライブラリー

最初の話し手は札幌市図書・情報館の淺野館長。私たちがよく知る、本を貸し出す「読書普及型」図書館に対して、札幌市図書・情報館は本の貸出しは行わず相談窓口であるレファレンスを強化している「課題解決型」図書館と銘打っている。
札幌市図書・情報館の「情報」とは、時にその分野の専門家という"人"に姿を変えて発信される。ビジネスや起業に関するプロを配備した「よろず相談」では開館以来、半年で4件の起業相談があり、ラーメン店「トマト麺Vegie」は念願の2号店出店が実現したという。

16人の司書を抱える札幌市図書・情報館。司書が企画する年間24本のセミナーに加えて淺野隆夫館長自身が担当する単発セミナーもあるという。

再開発ビルに入るという場所の制限は、蔵書に対して「選択と集中」を生んだ。従来であれば、できるだけ幅広い図書を揃えて利用者に選択を委ねてきた司書たちに棚づくりを任せ、各自が「花壇を手入れするように」愛情を注いで受け持ちの棚を育て続けている。

続けて、まちライブラリーの久重薫乃さん。私設図書館というなじみのない存在は「どんな場所にしていくか」も自分たちで考える試行錯誤の連続だ。2016年12月の開館以来、地道な広報活動を続け、「サポーター」と呼ぶ地元有志の力で今日を迎えたことを紹介する。
2019年9月末時点で会員数は2121人。蔵書数は2万4528冊に上る。

まちライブラリーの寄贈本には全てメッセージカードが付いている。寄贈者のコメントから始まり、読んだ感想のバトンを渡していく。

全国のまちライブラリーの中でも企画持ち込みが盛んな@千歳タウンプラザのキャッチコピーは「やってみたいをカタチにしよう」。「一人一人が発信し、受信できる居場所」になりつつある。 地元商店街との距離を縮めようと手書きのガイドマップ「千歳の幸せ図鑑」も制作した。千歳科学技術大学の協力を得てVR画面もでき、紹介されている店内を360度見ることができるという。

会場にスペシャルブースも展開、広がる交流の輪

この二人のプレゼンを受けたまちライブラリーの礒井純充さん。「ネットで情報を容易に集めることができる現代ですが、そもそも情報とは"情"と"報"で出来ている。"報"は事実を伝えるレポートにあたりますが、"情"にあたる部分、関係者の表情や温度感などは(ネットではなく)リアルでしか伝えきれない」と自説を述べた。

札幌市図書・情報館の司書や専門家を頼りにする利用者がいるように、まちライブラリー@千歳タウンプラザには久重さんたちスタッフを慕うサポーターがいる。
どちらも図書館離れしていた人びとを再び呼び寄せ、"居場所"たりうる空間に成長しつつあるという共通点を分かち合ったトークとなった。

トークの冒頭ではスペシャルブースの参加者たちが紹介された。

千歳の前道孝幸さんは貴重な写植印刷機の道具を展示。わかる世代をうならせていた。

札幌からかの書房も参加。おすすめの道内作家本を陳列した。

千歳市立図書館の講座受講生たちが同人誌「ぷと」を発行。マイクを持っているのは児童文学『15歳、ぬけがら』で2017年6月に作家デビューした栗沢まりさん。

末尾になるが、この日マイクを持った久重さんは実は9月末をもってまちライブラリーを退職し、愛媛でみかん農家を営む実家に帰ることが決まっていた。
開館以来、同館の精神的な支柱として周囲から絶大な信頼を集めていた久重さんの"卒業"はなんともさみしい限りだが、「まちライブラリーにいたからこそ自分が故郷にできることって何だろう?と考えた。今なら地元に帰ってもいろんなことができると思えるから、帰郷の気持ちが固まりました。すごく楽しみな気持ちでいっぱいです!」と、迷いのない笑顔を見せてくれたところがまた、彼女らしい。

北海道書店ナビも大変お世話になりました。久重さん、ありがとうございました。愛媛みかん、楽しみにしています!

まちライブラリー@千歳タウンプラザ

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