[イベントレポート]
全国の図書館関係者が夏の札幌に集合!
分かちあい、つながる北海道図書館研究会レポート
[2019.7.22]
図書館総合展の翌日に一日限りの北海道発「特別授業」
2019年7月7日日曜、快晴の札幌で熱気あるトークフォーラム「北海道図書館研究会」が、かでる2・7で行われた。
北は北海道の名寄から南は熊本まで、各地の公共図書館や学校図書館で働く関係者が集い、地元札幌からは書店やブックカフェ、教育関係者も参加。
「本のあるところ」で育まれている知恵と熱意を共有する空間となった。
企画の発端は、前日に札幌市図書・情報館で開催された図書館運営者や教育関係者向けのイベント「図書館総合展2019フォーラムin札幌」にある。
全国から図書館関係者が集まる同展のにぎわいに着目した札幌在住のブックコーディネーター加藤重男さんが司書仲間である幕別町図書館の民安園美さん、札幌在住の重野正子さんと、「道内の頑張っている図書館の動きも皆さんに知ってもらいたい」と一日限りの学校形式のフォーラムを発案。
「オール北海道」を合言葉に実行委員会を立ち上げた。
当日の時間割りは下記の通り。
- 1時限目 「北海道学校図書館 実情と取組み」
登壇者 全国SLA学校図書館スーパーバイザー 佐藤 敬子氏 - 2時限目 「危機対策」
登壇者 熊本県菊陽町図書館係長 松本 和代氏
夕張市図書コーナー 平井 由美子氏
報告とコーディネート 北海道図書館研究会 加藤 重男氏 - 3時限目 「本屋のかたちが見えてきた」
登壇者 いわた書店 店主 岩田 徹氏 - 4時限目 「企画と知恵で広がる・繋がる」実例レポート
登壇者 市立小樽図書館長 鈴木浩一氏/滝川市立図書館長 深村清美氏
河出書房新社北海道地区コーディネーター 加藤 重男氏
コーディネート 幕別町図書館 民安 園美氏 - 5時限目 北菓楼札幌本館見学 ※建物が旧北海道庁立図書館
以下に、各時限の主だった内容をまとめていく。
[1時限目]深刻な北海道の学校図書館状況、学内外に理解を呼びかけて
1時限目のゲストは、全国SLA学校図書館スーパーバイザーの佐藤敬子さん。中学校教諭だった現役時代、30年間の長きにわたって学校図書館の現場で格闘し続けたキャリアからの提言に、皆の視線が集まった。
佐藤さんの「本のフルコース」はこちら!
朝から「暗い話になりますが」と前置きをして佐藤さんが語り出した内容は、数字から見る北海道の学校図書館の深刻な現状。
誰でも閲覧可能な二つの資料、「平成28年度学校図書館の現状に関する調査」(文科省)と「平成30年度学校図書館整備施策に関するアンケート」(公益財団法人文字・活字文化推進機構他3団体が実施)をもとに次々と、司書教諭の発令状況、学校司書の配置状況などいずれも全国平均を遥かに下回る北海道の数字をあげていく。
なかでも残念な項目は「学校図書館全体計画の策定状況」。学校図書館を誰がどの目標に向かって、どう具体的に機能させていくのか、官民を問わず組織を動かすために必要な全体計画が「ないし、そもそも必要だとも思われていない」という厳しい現実をつきつけた。
北海道学校図書館協会の理事でもある佐藤さん。平成17年度札幌市教育功績者表彰を受けている。
さらにため息が出るような問題は、「人」の配備だという。学校図書館法により12学級以上の学校に必ず置かなければならない司書教諭だが、北海道には11学級を下回る小中学校が多いため、発令状況は惨憺たる現状だ。
他方、教員ではない「学校司書」も、法律上は「置くよう努めなければならない」という努力義務にとどまっているため、身分や立場が不安定。「民間委託や公共図書館司書にまるなげする」例もあるという。
これらの資格とは別に文科省が定める「学校図書館担当職員」にいたっては、学校側が教育委員会に届け出るときに実務経験がない司書教諭を充てるケースも少なくないそうだ。
「図書館の担当になったからといって通常の授業数が減るわけでもなく、いわばひとり二役になり、逃げたがる人が多いのもわかる」という佐藤さんの言葉には、ご自身を含め数多くのケーススタディを見てきた人ならではの重みが伴っていた。
そして「嘆いてばかりいても仕方がないので対策を」という視点から学校図書館への理解を学校内外に呼びかけていくことが大事だと力説する佐藤さん。
「皆が現状を知ることで、できることから行動していってほしいと思います」。「常に危機状態」にある北海道の学校図書館の改善を呼びかけた。
歯切れのいい佐藤さんの解説に質疑応答も熱を帯びた。「学校司書が、図書館業務にあまり乗り気ではない司書教諭とうまくいくコツは?」という質問には、「"司書あるある"ですよね。先生たちはそれでなくても忙しいですから、ただ闇雲に気持ちをぶつけるだけではダメ。まずは相手をよく観察して。いいところや共通の話題を探す、あるいは話しかけ方などの作戦を立ててからアプローチしてみては」という回答で励ました。
[2時限目前半 熊本県菊陽町図書館の場合]
掲示板で情報を発信、反省から学んで備える自分たちに
2時限目のテーマに「危機対策」を設定したのは、北海道図書館研究会の加藤重男さんだ。
2018年9月6日の北海道胆振東部地震を経験し、「災害が他人事ではなくなった」道民の意識を踏まえ、2016年の熊本地震を体験した熊本県菊陽町図書館と、こちらもまた他人事ではない2006年に道内初の財政再建団体入りを表明した夕張市の図書コーナーをピックアップ。貴重な当事者の声をクロスオーバーさせた。
その加藤さんから冒頭、北海道胆振東部地震で震度5から7までを記録した地域の市町村図書館や、札幌・千歳・室蘭・苫小牧・厚真・安平などの書店被害情況が報告された。
「厚真町青少年センター図書室は蔵書がすべて落下し、再開は10月1日から。むかわ町立穂別図書館は書架が20台倒壊と被害が甚大。再開は2019年4月3日からでした」
書店のほうはスプリンクラー作動による水漏れ被害があり、現場は思わぬ対応に追われたという。
続けて菊陽町図書館係長の松本和代さんの報告。
人口4万1800人近くの菊陽町は、阿蘇くまもと空港からのアクセスが車で約10分。地の利をいかして半導体メーカーのソニーセミコンダクタや富士フイルム九州工場などの企業誘致に成功し、人口増加率が全国16位(平成27年度国勢調査)という勢いに乗り始めている自治体だ。
菊陽町図書館の松本さん。「地震後は他道府県の図書館の方々から励ましの言葉をいただいて本当に勇気づけられました。この場を借りてお礼を申し上げます」
2016年4月14日木曜21時26分の前震と、16日土曜1時25分の本震はいずれも最大震度7。固定していなかった書架が倒れ、図書3万冊が落下。図書館ホールの天井も落下するなどの被害を経てもなお、4月21日木曜という異例の早さで図書館が再開できた理由は「図書館の建物とスタッフの自宅の被害が小さく、復旧作業が早かったから。福祉避難所として指定されていた図書館ホールが破損したことで避難所対応に追われなかったことも大きかったです」と松本さんは解説する。
こういうとき、図書館は住民に対して何ができるのか――。悩む松本さんがネットで見つけた答えは、東日本大震災時に気仙沼図書館が被災者が求めているインフラや避難所にまつわる情報を次々とアップしている掲示板の画像。「これだと思いました」。
早速、情報掲示板を設置し、県庁や役場から収集した"みなし仮設"住民への災害者支援メニューや、車中泊で懸念されていたエコノミークラス症候群対策を掲載。
長引く車中泊から家に帰るのが恐いという子どもたちのために、熊本市の子ども発達支援センターが制作した絵本『やっぱりおうちがいいな』も紹介した(この絵本は現在10カ国語に翻訳されている)。
松本さんたちが実践した情報掲示板。被害の大きかった隣町、益城町(ましきまち)を含め近隣情報も掲載した。
「実はあとあとになってから『東松島市図書館3.11からの復興』という本を読めば、当時私の知りたいことはすべて書いてあることがわかりました」と述懐する松本さん。
「自分事にならないと他から学ぼうとしなかったことを反省しました」という言葉は、2時限目のもっとも大事なメッセージのひとつになった。「学び、備えていきましょう」という終わりの一言に参加者たちも幾度も頷いていた。
- 東松島市図書館3.11からの復興―東日本大震災と向き合う
- 加藤孔敬 日本図書館協会
- 著者の加藤さんは本研究会にも参加。胆振東部の被災地もまわっている。
[2時限目後半 夕張市図書コーナーの場合]
郷土資料を守る図書コーナーとして奮闘、来年は複合施設で再出発!
2019年6月時点で人口8000人をきった夕張市は、北海道の市の中で唯一、図書館がない自治体である。
「市の財政破綻から現在に至るまでの図書館事情を全てご存知の方」と加藤さんに紹介されたのは、夕張市図書コーナーの司書、平井由美子さん。市の歴史から振り返った。
炭鉱で栄えた夕張市の人口のピークは1960年の約11万6900人。1982年に北炭夕張新炭鉱が閉山したのを皮切りに、1990年には最後の炭鉱である三菱南大夕張炭鉱が閉山。 閉山の後始末と1980年に建てられた「石炭の歴史村」の経営が市の経済を圧迫し、2007年、市は財政再建団体となった。
驚くべきことに、「私たち職員も朝刊で破綻を知りました」と平井さん。
以降まちの冷え込みは止められず、現在の高齢化率(65歳以上の割合)は50%を超えているという。
財政再建団体になった年の3月に市立夕張図書館は廃止となり、4月に保健福祉センターの一角に夕張市図書コーナーが開設した。
「炭鉱にまつわる貴重な郷土資料を持っていたことが図書室が生き残った大きな動機付けになったと思います」。
図書コーナーのたった一人の嘱託職員となった平井さんだったが、読み聞かせボランティア「ひなたBOOK」や夕張子ども文化の会「かぜちゃる」の有志が館内の整理整頓や図書の補修、読書活動の支援などさまざまな局面で支えてくれたという。
「学校図書館の本は市内で唯一の書店に発注し、バーコードラベルの貼付けやフィルムコーティングなどの装備をしてから納品してもらっています」。
うれしいニュースもある。コンパクトシティを目指す夕張では2020年春に南清水沢地区で「交通結節機能や子育て支援機能、図書機能などを有する「拠点複合施設」を建設」(市の発表より)することが決まっている。
図書コーナーは同施設の目玉のひとつ。「新しい建物で働けるのが楽しみ。利用者が増えてくれることを願っています」。平井さんの奮闘に新たな光がさしこんでいる。
この日会場では空気で膨らむソーラーライト「エムパワード」の紹介コーナーも設置。アメリカでアウトドアグッズとして生まれたエムパワードだが、日本では軽量、防水、ソーラー充電の特性から防災アイテムとして購入する自治体もあるという。USB充電対応の種類もある。
[3時限目]図書館人に呼びかけるいわた書店「一万円選書」のすすめ
研究会後の懇親会で「今日一番印象に残っている時間は?」と数人に聞いたところ、「それはもう、いわた書店さん!」と皆が口を揃えるほど、わきにわいた3時限目。
「一万円選書」で全国に知られる北海道砂川市のいわた書店から岩田徹さんが登場し、軽妙なジョークをはさんだ70分間たっぷりの岩田節を披露した。
進学校である函館ラ・サール高校での日々が人格形成に大きな影響を与えたと語る岩田さん。
一万円選書も、2006年の高校の同窓会で先輩から「一万円で俺に面白い本を選んでくれよ」と言われたことがきっかけになったというのは有名な話。
2004年には地元紙の「プレス空知」から毎週1冊の書籍紹介を依頼され、「毎回1冊紹介するために3冊は読む。年間50週だとすると1年に150冊。これを10年間続けて1500冊読み続けてきたことがぼくの血肉となって、あとから効いてくるわけです」。
毎回500字の原稿で良書を紹介する力を磨き、「一万円選書」の土台を築いた時期だったと振り返る。
「一万円選書」に出番が多い木皿泉著『さざなみのよる』(河出書房新社)の累計販売部数は1000冊。「うちが日本で一番売っています」と胸を張る。
一万円選書の当選者の中には「20代で早くも人生に深く絶望している人」もいるという。
「人生に漠然とした不安を抱いている若い彼らに、本を通してアドバイスできるのは本屋と図書館だけ」という岩田さんがここで提案したのは、「ぼくの一万円選書をもとに皆さんもぜひご自分なりにアレンジしたものを作って使ってほしい」という、いわた書店お墨付きの二次使用だ。
これにすかさず反応した人物が、2019年3月に札幌市豊平区でオープンした「かの書房」店主の加納あすかさん。
「本当にマネしてもいいですか?」という直球の質問に、岩田さんも「はい、どうぞ」と笑顔で回答。
「『冷やし中華始めました』のノリで広めてほしい」と笑いを誘いながら、図書館関係者に宿題を投げかけた。
[4時限目]実例レポート:小樽市・滝川市・幕別町の取り組みを紹介
4時限目のテーマは「つながる」。道内3カ所の図書館から実例が報告された。
トップバッターは人口4万人のまち、滝川市から滝川市立図書館の深村清美館長。2011年11月に市役所2階に場所を移してから心機一転、行政、医療関係、地域、学校や幼稚園、まちなか、メディアとの「連携」を活発に行っている。
連携を一枚にまとめるとこんなにビッシリ!それぞれの活動詳細は図書館の公式サイトでご覧ください。
特筆すべきは、これらの細やかな連携が図書館への親近感につながり、図書館来訪の大きなモチベーションとなる購入雑誌125誌のうち73誌が「雑誌ささえ隊」という企業や団体・個人からの寄贈で成り立っているというもの(その中には地元の書店、TSUTYA滝川店も入っている!)。
年間約60万円分の軽減になっている。
ほかに地元ロータリークラブや滝川国際交流協会、観光国際課と組んで英語の絵本の読み聞かせを企画し、結果273冊(約50万円相当)の絵本を寄贈してもらうなど、柔軟な思考と「やってみる」行動力で従来にない図書館運営を実現している。
お寺との連携では本物の僧侶から怪談を聞き、その後墓地を歩くというガチなきもだめしを実施。親子の悲鳴が飛び交ったとか。
現在図書館の利用は移転前の4倍になり、「未来へ伝えたいMONO(モノ)は何ですか?」という来館者アンケートでは図書館が190票を集め、堂々の第一位に輝いた。
実行しているのはどれも奇抜なアイデアではなく、「やってみようか」という身近な発想。それを実行に移すかどうかが、のちのち大きな差を生み出すことを教えてくれる滝川市立図書館の奮闘ぶりだ。
続けて市立小樽図書館の鈴木浩一館長が登場。鈴木さんは道立図書館勤務時代に全道各地の図書館支援に力を尽くした熱血派図書館人。多くの関係者に慕われている。
鈴木館長の「本のフルコース」はこちら!
小樽図書館への配属は2019年で4年目。評価指標を「入場者数から利用者数へ」と移行し、従来の貸出しメインではなく「外に出る図書館」像を打ち立て、コラボ企画に軸足を置いている。
地元の小樽商科大学や小樽水族館との連携事業や、市内在住の絵本作家こぐれけいすけさんに児童コーナーで実際に絵本づくりをしてもらい、その過程を公開する企画も展開。
「図書館が創造の場にもなる」ことを伝え、完成した絵本5冊の原画は図書館に寄贈された。
職員から「小樽が舞台になっているおもしろいマンガがありますよ」と聞けば、それまでマンガは購入しないルールを改めるのも鈴木流だ。
再び小樽商科大学を巻き込み、小樽出身の山花典之原作によるマンガ『聖樹のパン』の紹介と同時に市内のパン屋さんも紹介する企画を実施。
この展示が契機となり、のちに学生たちが冊子を制作。さらに小樽市長が2019年度に「ブレッドツーリズムの構築を進める」と表明し、北海道屈指の観光地に新たなムーブメントを起こそうとしている。
「図書館に主人公のパネルを置いたら、作画を担当したたかはし慶行さんが登場人物を追加してTwitterにアップしてくれました!」
この日も「今日ここにいらっしゃる全国の皆さん、小樽図書館とコラボしませんか?」と意欲を見せる鈴木館長。
北海道書店ナビ取材班が手を挙げて「お願いします!」と言えば、「よし、やりましょう!」と目を輝かせて応じてくれた。
4時限目最後のプレゼンは、幕別町図書館の民安園美さんから。前述の小樽市が11万7000人に対し、道東にある幕別町の人口は2万7000人。
1991年に開館した幕別町図書館は、2014年に業界ではまだ目新しい図書管理システム「カメレオンコード」(2次元カラーコード)をいち早く導入した図書館として知られているが、この導入までにもドラマがあった。
まず、このカメレオンコードを新たに装備する手間が従来の業者から敬遠され、同館は図書の購入を100%地元書店の購入に切り替えた。だが装備にかかる費用の問題は依然残り、そこで書店が見つけてきた福祉事業所に装備作業を発注することに。
「チャレンジ雇用」という形で福祉事業所のメンバーに作業を委ねたところ、本館約10万冊のバーコード貼付が年内に終了し、通所者たちの自己肯定感もアップ。
その後、中札内高等養護学校幕別分校ともつながり、ポップや棚づくりに挑戦する作業学習の受け入れがスタート。
「障がいを持つ方の『居場所』になる図書館」として機能し始めている。
オリジナルキャラクター入りの図書館トートバッグの制作も前述の養護学校がシルクスクリーン印刷を担当し、町内の施設や商店で使える500円分商品券と木のしおりをつけて1500円で100個販売。完成記念イベントには読み聞かせやAR体験も行い、バッグはたちまち完売した。
ゆり根やじゃがいもなど町内の名産をモチーフにしたオリジナルキャラクターたちに会場から「かわいい!」の声があがった。
活気あふれる3館の活動に質疑応答も盛り上がる。
「連携のコツは?」という問いかけに鈴木館長が「基本的になんでもアリの精神で」と答えると、深村館長も「本はどことでもつながれる財産。垣根なく考えてみては」とアドバイス。
「スタッフのやる気を引き出すには?」への回答は、「プロとして仕事ができる喜びを伝える」(鈴木館長)、「誰のためにこの仕事をするのかを確認してもらう」(深村館長)、「成功体験を与えて"できた"喜びを実感してもらう」(民安さん)。
〈巻き込み上手〉と〈情熱〉と〈形にする力〉の三位一体で自分たちの連携を発展させていく3館に、参加者はおおいに刺激を受けたようだった。
登壇ゲストとコーディネーターたち。「またやってほしい!」の声が早くも加藤さん(後列左端)のところに届いている。加藤さんは2018年7月から図書館と地元書店、メディアを連携させたコラボ企画「猫パネル展」を各地で実施。「猫をきっかけに本に触れてもらう機会をつくりたい」と語る。
図書館つながりで旧道庁立図書館建物の北菓楼札幌本店へ
午前9時30から始まった授業形式のフォーラムも4時限目が終わり、午後5時をまわった。長丁場の最後は、課外授業の5時限目。
参加者は、旧北海道庁立図書館の建物を再活用した北菓楼札幌本店の見学へと移動した。
案内役は同社企画部課長の大野重定さん。2016年に札幌本店オープンを現場でけん引し、自宅に2000冊近くの本を持つ読書家でもある。
大野さんの「本のフルコース」はこちら!
同店2階のメモリアルルームには建物の歴史にまつわる写真や資料が展示され、カフェスペースの天井まで届く壁にぎっしりと詰まった本は約6000冊。本を扱う人間にはたまらない空間でしばしの見学やショッピングを楽しんで、お開きとなった。
建物の歴史を解説する北菓楼の大野さん。北菓楼は研究会の「おやつタイム」に北菓楼札幌本館のオリジナルクッキー「北海道廳立圖書館」とバームクーヘンを提供。疲れた頭を休める格好のおやつが大好評だった。
カフェの書棚に思わず釘付けになってしまうのはやはり図書館関係者ならでは。通常、カフェ利用者は閲覧自由。
北海道図書館研究会の参加者は定員50名を上回り、63名に。愛媛や新潟、道内では留萌市からも参加があった。
放課後で"授業"から解放されたはずの参加者だったが、気がつけば図書館事情の話でまた盛り上がるグループも多かった。
今や「読書」や「知る」という営みをどう広めていくかは、「本」を仕事にしている職業人の共通の課題。
業種や地域の枠を超えて知恵を分かちあう姿勢が現状打破につながっていく。