[イベントレポート]
発売部数1万部突破! 『科学史ひらめき図鑑』出版記念トーク&サイン会
[2019.9.2]
サイエンスコミュニケーションに強いスペースタイム初の書籍が1万部突破!
2019年8月9日午後6時から紀伊國屋書店札幌本店で、札幌の制作会社スペースタイムが執筆した『科学史ひらめき図鑑』(ナツメ社)の出版記念トークイベントが開催された。
話し手は執筆とイラストを担当したスペースタイムの楢木佑佳さん(下の写真中央)と、監修を務めた北海道大学名誉教授の杉山滋郎さん(写真右端)。
2010年1月に創業したスペースタイム。代表は中村景子さん。楢木さんは創業年の春から入社した社員第一号だ。
スペースタイムは北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(通称CoSTEP:コーステップ)出身者が多く、サイエンスコミュニケーションに特化した事業展開が強み。科学技術系の話題を事実に基づきながら楽しく伝える咀嚼力が高く評価されている。
今回の「文系ビジネスパーソンをターゲットにした科学史の本を」というナツメ社からの難しい依頼にも十二分に応え、本書は2019年1月16日の発売後わずか10日で重版が決定! Amazonの科学史・科学書部門で堂々の1位を記録したこともあり、現在は発売部数1万部を突破と、同社初の執筆書籍にして代表作となる好スタートをきっている。
出版のいきさつや制作エピソードをうかがった記事はこちら!
ひらめき図鑑ができるまでを「5つのひらめき」で紹介
本書のサブタイトルは「世界を変えた科学者70人のブレイクスルー」。時系列で史実を紹介していく一般的な科学史本と異なり、科学者を課題解決に導いた「ひらめき」をキーワードに構成しているところが、最大の魅力となっている。
「その『ひらめき』を5つのパターンに分類し、『視点を変えろ!』『人の話を聞け!』『失敗から学べ!』『偶然を呼び寄せろ!』『苦労を惜しむな!』という項目別に70人の科学者を割り振っていきました」(楢木さん)。
この日のトーク構成も、本書ができるまでの道のりを「ひらめき図鑑のひらめき」と題して、前述の5つの分類に沿いながら紹介したところが面白い。
文系読者に敬遠されがちな科学史本に「ひらめき」という切り口を導入したところがすでに「視点を変えろ!」の枠組みに該当し、5つの分類の普遍性を自分たちで証明したことになる。
当時の服装や生活用具の描写に凝るあまり、イラストの執筆が滞ったピンチも「思いきって単純化しよう!」というひらめきで乗り越えた。本筋ではないところに時間をかけすぎた「失敗から学べ!」のひらめきだ。
楢木さんをサポートしたスペースタイム柳田拓人さんの助力もあり、校正が出来上がると、次は監修の杉山滋郎さんの出番となった。
「はじめに監修依頼があったときから2年近く経っていたので、すっかり忘れていた」頃に大量のゲラを受け取った杉山さん。
長く科学史を専門に研究・指導してきた身として、記述の一次情報(論文や著書)や最新情報にあたることを重要視したという。
2018年10月、宇宙の膨張を示す法則「ハッブルの法則」を、ハッブルより2年早く同じ内容を発見していたルメートルの名を加えて「ハッブル=ルメートルの法則」と呼ぶように国際天文学連合が変更を勧告した。
この勧告を素早くキャッチし、70人の科学者の中にハッブルを取り上げていた楢木さんたちに知らせたのも杉山さんである。
もし12月下旬に発表された日本学術会議による同様の勧告を読むまでこの変更を知らなかったとしたら、すでに校了を終えていたひらめき図鑑は「ハッブルの法則」のまま、掲載されていたことになる。
杉山さんの研究者ならではのアンテナが、最新情報を反映した本づくりに貢献した。
イラスト化することのわかりやすさと専門性のバランスを考慮し、「ギリギリのところ」を意識して原稿チェックをしたことを解説する杉山さん。
こうして制作期間約2年半を経て日の目を見た『科学史ひらめき図鑑』。現代社会が当たり前のように享受している科学の恩恵をわかりやすくひもとく科学史本であり、「結果を出す人」の思考法をたどる刺激的なビジネス書として書店に並んでいる。
当初のターゲット層である文系ビジネスパーソンはもちろん、中高生のお子さんがいる家庭にもぜひ1冊置いてほしい。
当時の時代背景を踏まえた理系知識と、遊び心も織り交ぜた文系の表現力。どちらも楽しめる内容だ。
実際、この日もトーク後に来場者が次々と同書を購入。主催者も驚く売れ行きは誠実な執筆姿勢への感銘と「ひらめき」のヒントを持ち返りたいという意欲の表れとも読み取れる。
「"本質でないところに時間をかけない"というのは育児にも通じるなと思いました」という声も主催者に届いており、実りの多い90分を皆で分かち合うトークイベントとなった。
トーク後のサイン会も大盛況!会場購入者限定でオリジナル・トートバッグが進呈され、「すでに買いましたがもう1冊」という人もいた。
この日の内容は後日、イベントログ化サービス「ログミー」でも掲載される。掲載時期はスペースタイムのFacebookでご確認を!
画像提供:スペースタイム