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第330回 俊カフェ

今年5月3日にオープン!札幌のイラストレーターyukkyさんが描いた谷川俊太郎さんの似顔絵付き看板を探して訪ねてほしい俊カフェ

[新店紹介]2017年5月、札幌市の南3条通り沿いに 全国初、詩人の谷川俊太郎さん公認「俊カフェ」OPEN!

[2017.6.26]

本人公認の私設記念館&詩を五感で味わうカフェが誕生

2017年5月3日、詩人の谷川俊太郎さんを敬愛する札幌のライター、古川奈央さんが、札幌市中央区に谷川作品の蔵書をたっぷりと味わえる「俊カフェ」を開店した。 谷川さん「公認」の私設記念館的な役割も兼ねていることからたくさんのメディアに取り上げられ、全国から"俊太郎さんファン"が訪れている。

古川さんが谷川さんの詩を真剣に読むようになったのは大学卒業後、テレビCMで『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』というフレーズに出合い、同じタイトルの詩集を書店で手に取ってから。 以来1冊1冊を浴びるように読み、ことばの力を身のうちに取り込んでいった。 その後ライター業の取材を通じて、氏の息子である谷川賢作さんの音楽ユニット「DiVa」の魅力にハマったこと、2012年には古川さんの母校、札幌開成高校の50周年式典に校歌と50周年記念歌を書いた谷川さんが来賓として招かれ、そこで知己を得たことなどが積み重なって交流が始まった。

谷川作品への情熱をたくさんの人と共有したいと、はじめての展示会を企画したのは2015年7月のこと。谷川さんに手紙を書いて快諾してもらい、札幌市中央区のギャラリー「Space Symbiosis」で「とても個人的な谷川俊太郎展」を開催した。古川さんがコツコツと集めた谷川作品に混じって、谷川さんが貸し出してくれた私物も展示され、17日間で1000人以上を集客した。 この満員御礼の実績と、なにより「谷川さんについて語りたい」と集まってくれた大勢の笑顔が、古川さんの心に「俊カフェ」構想の火をつけた。

「思えば、あの企画展がスタート地点。次は常設の俊カフェを開きたいと俊太郎さんにお伝えしたとき、かえって"大変じゃない?"と心配していただいたくらいですが、私のやりたい気持ちがどうしても消えなかった。 "それなら協力できることはするから、なんでも言ってね"とおっしゃってくださった俊太郎さんや、開業資金を募るクラウドファンディングにご支援いただいた方々、開成高校の関係者の方々など、皆さまに助けていただいて現在にいたります」 人生の転機ともいえるカフェオープンから1カ月、古川さんのことばに感謝と充実感がにじんでいた。

5月21日のオープニングパーティーでグッズの解説をする古川さん。この日のために東京から来道した参加者もいた。

「まだまだあった」私の知らない俊太郎さん本

肝心のお客様の反応について訊ねると、「こんなに俊太郎さんの本があるとは思わなかった」という驚きの声が一番多いという。 それもそのはず、カフェの一画を占める棚には谷川さんの詩集や絵本、エッセイ、対談、雑誌などの書籍が約250冊。図書館並みの蔵書量で迎えてくれる。

「俊太郎さんご本人からいただいたものや"うちにあるよりここにある方がいいから"と寄贈してくださった皆さんのおかげで、ここまでのボリュームになりました。ある程度は知っているつもりだった私でも、まだまだ知らない本がいっぱい!俊太郎さんの膨大な作品量に驚くばかりです」

「こちらは俊太郎さんには珍しい写真集です」。詩人には車やカメラなどメカ好きの一面もあるという。

書籍が集まれば集まるほど、谷川さんが紡ごうとしたことばの世界が見えてくる。その世界をここから伝えられるがのうれしくてたまらない。 その「伝える」ために欠かせないもうひとつのアイテムが「グッズ」なのだと古川さんはいう。

詩を本の外に開く、日常にポエジーを感じるためのグッズ

俊カフェの驚き、ふたつめは谷川さんの詩を活用したグッズのラインナップである。古川さんが初めて手にしたグッズは、1行詩入りの「ポエペンシル」。前述の開成高校50周年式典のときに谷川さん本人からいただいた。 「こういうグッズへの展開も詩を詩集などの本の外に開いて、日常の中でポエジー(詩情)として感じてほしいと願う俊太郎さんの世界。"初めて見た"と感激されて買って行かれるお客様が多いです」 親子で来店し「父の日」のプレゼントに、と隣にいる父親にTシャツを選ぶ娘さんの姿もあったという。

人気のポストカードや飲み終えた底に詩が見えるマグカップ、Tシャツ、顕微鏡でプレパラート上の詩を見る非売品「ポエミクロ」 。

取材時にできたてほやほやのアイテムは、俊カフェオリジナルの缶バッジ。イベントを紹介する「俊カフェ通信」もリクエストがあり作成した。 「あればいいかも」と思ったものは即やってみる。これも俊カフェオーナー、古川さんのモットーだ。

古川さんも参加している詩の講座「札幌ポエムファクトリー」などさまざまなイベントを企画中。最新情報はFacebook「俊カフェ」を要チェック!

ここでしか読めない、俊カフェを寿ぐ書き下ろしの詩も

DiVaの曲が静かにかかる店は、座席料500円。その場で楽しんでいただく蔵書のほか、いくつかの出版社から出ている谷川さんの本を販売もしている。

「俊カフェ」の楽しみ方は、十人十色でいい。ドリンクを飲みながら棚から一冊を取り出して読みふけっても、古川さんに声をかけて"俊太郎さんトーク"に花を咲かせてもいい。 あるいは「俊カフェ」のために書き下ろされた、ここでしか読めない谷川さんの詩をそっと声に出して読んでもいいかもしれない。 「俊太郎さんの詩は、読むひとのことを思って書かれています。読む人の心を代弁するようにことばが厳選されているからこそ、"私の大事な一篇"になる。お客様と話していると、皆さんがそこに共鳴していることに気づかされました」

詩は子どもにも大人にも開かれたもの。店内にはキッズスペースがあり、ひとりで長居できる席もある。

詩人からはたまにうれしいサプライズがある。取材当日にも電話があり、谷川さんが訳したスヌーピー本が数冊贈られてくるという。 厨房奥には小さなデスクがあり、ライターの仕事も続けながら俊カフェオーナーという新しい顔を手に入れた古川さん。 同業のよしみもあり、「大変だと思いますが、でもそれ以上に楽しそうですね」と伝えると「そうなんですよ、楽しくて」と目を細めてうふふ顔。 谷川さんがいう「ポエジー」を五感で味わうことのすばらしさを、古川さんご本人から感じとる俊カフェ誕生1カ月目のひとときだった。

●俊カフェ 北海道札幌市中央区南3条西7丁目KAKU IMAGINATION 2F TEL 011-211-0204 営業時間11:00~20:00 火曜定休
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