おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第254回 フルコース2015総集編

5冊で「いただきます!」フルコース本

書店員や編集者が腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。 おすすめ本を料理に見立てて、おすすめの順番に。 好奇心がおどりだす「知」のフルコースを召し上がれ

Vol.30 フルコース2015総集編

[2015.12.28]

書店ナビ 2015年5月から始まった「5冊で『いただきます!』フルコース本」の30回目は、ちょうど2015年の最終更新の回と重なったことから《これまでに掲載してきた29種類のフルコースのなかから、われわれ北海道書店ナビ取材班が厳選したスペシャルメニュ—》をご紹介! その名も「フルコース企画を知るための特選フルコース」をお届けします!
5冊で『いただきます!』フルコース本のつくりかた
1. フルコースをつくってくださる選者を決める・お願いする。「このテーマなら大好きな5冊がある!」というテーマ設定が、かなり重要。
2. 「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」に該当する本を記入した企画書兼取材シートを事前に送っていただく。「魚料理をやめてデザート2品」などのアレンジも大歓迎。
3. 取材(約1時間半)。実際に5冊を手に取りながら詳しいお話をうかがう。
4. 事前に内容を確認していただいてから掲載週の月曜朝10時に更新!
[本日のフルコース] 30本目のフルコースは2015年の総集編 フルコース企画を知るための特選フルコース

Vol.1 MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店 菊地 貴子さん

没後50年、湯葉づくしならぬ…谷崎潤一郎づくし!  5冊文庫で「いただきます!」大谷崎本フルコース

2015年は谷崎潤一郎の没後50年。中央公論新社からは全26巻の全集刊行が始まり、店頭やテレビでも《大谷崎》が取り上げられることが多かった。

ふりかえりトーク

記念すべき第1回は、北海道書店ナビが幾度も取材でお世話になっているMARUZEN&ジュンク堂書店札幌店の菊地貴子さんにお願いしました。 フルコース企画が始まる以前から「読書家の書店員さんならきっと好きな作家がいるはず」と期待を膨らませていましたが、その予感は的中し、菊地さんは初回からいきなり極上の「谷崎づくし」をラインナップ。 いただいた紹介文からも芳醇な谷崎ワールドの香りが立ちのぼり、おまけに結びにはご自身が詠んだ俳句付きというサービスまで(前菜本の『猫と庄造と二人のおんな』を紹介する句は「前妻が 後妻から猫 ネコババし」)。 「すごい人にすごい企画を頼んじゃったね!」と、おそれ多さと喜びにうち震えるフルコース企画の幕開けとなりました。

Vol.18 北海道ブックシェアリング 代表 荒井 宏明さん 

図書館をもっと楽しむための本フルコース

東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市立図書館の支援活動を続ける一般社団法人北海道ブックシェアリングの荒井さんは、国内外の図書館事情に精通している。

ふりかえりトーク

フルコースの選者は当初、書店員さんに限定していましたが徐々に枠組みを広げていき、現在は出版関係者やデザイン、まちづくりなどの表現や社会活動に関わる皆さんにもお願いしています。 「北海道ブックシェアリング」代表の荒井さんもその一人で、元書店員のキャリアを活かし、まちづくりと連携した読書環境を整備するプロジェクトを精力的に進めています。 この「図書館」フルコースでも荒井さんの解説を聞けば聞くほど、「いまどきの図書館って本を借りるだけの場所じゃないんだ!」と驚きの連続に取材班一同がノックアウト。でも実はこういうワンテーマでディープなお話が聞きたかったんです。それがフルコースの面白さ、もとい、おいしさなのであります。

Vol.27 亜璃西社 編集者 井上 哲さん

ノンフィクション好きの編集者が魅せられた 「愛すべき人々」フルコース

亜璃西社は2015年11月に放送されたNHK「ブラタモリ札幌編」の番組づくりをサポート。地元出版社ならではの貴重な資料と情報を提供した。

ふりかえりトーク

北海道で頑張る地元出版社は、北海道書店ナビにとって書店と同じくらい応援したい存在です。札幌の亜璃西社は、『ほっかいどう映画館グラフィティー』や『さっぽろ味の老舗グラフィティー』などのグラフィティーシリーズでおなじみの老舗出版社。 代表の和田由美さんを長きにわたり支えてきた“番頭さん”が、ベテラン編集者の井上哲さんです。 人物伝に特化した「愛すべき人々」フルコースでは、さまざまな書き手と仕事をしてきた編集者ならではの目線から、取材対象者に“男惚れ”した筆者の気持ちをたっぷりと語ってくれました。 掲載後いただいたメールには「普段はあまり語る機会のない内面をさらしてしまったようで、このフルコースの恐ろしさをあらためて気づかされた次第です」と一言。さすが名編集者、企画の真意をずどんと突いてきます。

Vol.9 ジュンク堂書店旭川店 副店長 高田 学さん

「クローズドミステリ」フルコース 〜美味は閉じ込められた中に〜

小さいころから大のミステリファンの高田さん。地元劇団の脚本・演出も手がける構成力をフルコースづくりでも遺憾なく発揮してくれた。

ふりかえりトーク

フルコース企画には3つの難しさが潜んでいます。それはテーマの選定と5冊の絞りこみ、そして前菜からデザートまでの並べ順です。 高田さん作の「クローズドミステリ」フルコースはその点、どこを切り取っても「大好きなミステリで面白いフルコースをつくりますよ!」という愛情が濃厚な肉汁となってあふれ出てくる“最高級の和牛ステーキ”クラス。 ちなみに高田さんの取材同日、三省堂書店旭川店の高橋計康店長にも「ブラジリアン柔術黒帯書店員が選ぶ 極私的寝技上達近道本」フルコースを作っていただきました。格闘技ネタに取材班の男子チームが盛り上がる、盛り上がる。 旭川の書店員さん、個性派多し。また行きたいです、ディープ旭川。

Vol.22 ブックスメディアン明野店 長内 望さん

涙の数も、涙のワケもひとつじゃない。 「泣けてくる読み切り少女マンガ」フルコース

苫小牧のブックスメディアンではスタッフのおすすめコーナーを常設。入荷が難しい新刊や映像化原作だけに頼らない品揃えに心を砕いている。

ふりかえりトーク

フルコースづくりはどんなテーマも大歓迎。「このテーマ&この5冊ならいくらでも話せる」セレクトを毎回心待ちにしています。 なので文芸書に限らず、コミックや絵本などの身近なジャンルでも切り口次第でさまざまなフルコースが出来上がりそう。その先頭を切ったのが、ブックスメディアンの長内望さんでした。 昨今は10巻20巻超えは当たり前のコミックが多く、途中から読もうにも追いつくには相当な時間とお金がかかりそうですが、長内セレクションはどれも読み切りで、しかもいろんな「涙」がキーワード。 愛読書を紹介するうちに思わず長内さんも気持ちがこみあげてきて…取材班全員がそのとき、たまらなくスイートな気持ちになったことはここだけのお話です。

窓口&撮影担当K

どの回もすばらしかったんですが、がんばってひとつというと、Vol.20編集者堀直人さんの「本や雑誌のことだけじゃない!『編集を編集する』ってなんだ?フルコース」でしょうか。 これまで商談で話すことはありましたが、堀さんの「人としての考え」を聞くのはじめてで、「日々の中にも編集が潜んでいる」という言い回しがストンと心の中に入ってきました。

WEB制作担当A

僕はVol.2紀伊國屋書店札幌本店の林下沙代さんによる「私たちはアタマとカラダで出来ている。ようこそ、人文科学の世界へ!本フルコース」です。5冊を通して林下さんが書店員という仕事や自分自身にすごく真剣に向き合っていることが伝わってきました。

取材・原稿担当S

Vol.12札幌弘栄堂書店パセオ西店の石川幸店長、「これであなたも“観る将”!?将棋が大好きになる本」をあげたいです。知らないジャンルを教えていただく純粋な喜びと、「50冊でもイケました」というプロ意識にしびれました。

2015年に始まったばかりのフルコース企画ですが、予想以上の面白さに私たち取材班全員が毎回お話をうかがうのを楽しみにしています。 これまでご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。本を通してその人自身が見えてくる最高のフルコース、ごちそうさまでした!

2016年も北海道書店ナビをご覧の皆様に素敵なフルコースをお届けしてまいります!

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