おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第472回 本のフルコース「中の人」ふりかえり その1

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[ふりかえり企画]
170人以上が登場!「本のフルコース」を《中の人》が語るその1

[2020.4.20]

いまだからやっちゃう「ふりかえり企画」

コロナ感染症の拡大を防ぎたいこの時期、「北海道書店ナビ」もできる範囲で対面取材を延期し、すでに取材済みの情報も適切なタイミングをはかっています。
そこでたまに好き勝手にやっちゃおうか!と思いついたのが「ふりかえり企画」。
インタビューワーと撮影&画面制作の二人でコンビを組んでいる《中の人たち》が、北海道書店ナビの看板企画「本のフルコース」についてたっぷり語っちゃいます。

今週は撮影と画面制作の担当者、いつもメインの写真が大好評!麻生悠木のターン!以下、本人の原稿でお届けします。

宇宙後から伝わるハッピーヴァイブス

手前味噌ですが、【5冊で「いただきます」フルコース本】という選書企画は最高に面白い。

決して「読書好き」とはいえない僕が本の話を聞いて面白いと思うのだから本当に面白いんだと思う。

かれこれ170人以上の方々にフルコースを作っていただき、延べ850冊以上の本が紹介されてきた。正直に言う。そのうち実際に買った本は数冊だけだし、紹介してもらった作家さんもぱっと思い出せるのは数人くらいだ。

インタビューワーの佐藤優子さんと選者の方が作家さんについて語っている時、2人の会話は僕から見たら宇宙語のように聞こえ、僕の意識はどこか遠くに飛ばされる瞬間が多々ある。

二人が今話している作家さんのことが大好きなことだけは伝わる。
時に共通の友人について話しているかのように語り、時に憧れの先輩のように。恋人、家族、あるいは初恋の人のように…。
この「好きなこと、好きな人のことを話している」という、とんでもなくハッピーなヴァイブスが僕の意識を遠くに連れていってくれるんだと思う。

男の子っていいな。

特に印象的だったのは、株式会社メディアネットコーポレーション代表取締役の土田博文さん。

少年に「真の男とは」を教えてくれる 「大好き!松本零士本」フルコース

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土田さんが大好きな漫画家、松本零士さんの世界をこれでもか、これでもかと語ってくれた。キラキラと目を輝かせて、少年のように純粋に。
きっとそんな土田さんだからこそ、仕事で松本零士さんにグループインタビューするチャンスが訪れたとき、ご本人がほとんどの時間を土田さんに割いてくれたのだろう。

子供の頃に感じた「かっこいい」を忘れない、「真の男」を感じた。
改めて読み直してもかっこいい人なんだよなあ。

同じくらいグサっときたのが、2015年に取材した道東のBOOKs HIROSEの書店員、森山潤さんのフルコース。

生き方を教えてくれる 時代小説の世界にいざ、見参!

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「時代小説はご年配の方が読むもの」というどエライ先入観があったせいで30代の森山さんが紹介してくれること自体に驚いた。

そして忘れもしない名言「時代小説は大人の少年ジャンプ」に膝から崩れおちそうな衝撃を覚えたことを今でも覚えている。
時代小説はご年配の方が読むもの…なんてつまらない先入観の中で生きていたのかと、他にも見逃している楽しい世界がたくさんあるはずだと痛感した。
そしていまだに時代小説は読んでいませんが森山さん、待っててください、きっといつか…。

「好き」だけじゃなくて

本のフルコースを続けていると、信念に近い何かを感じることがある。それは札幌の硬派出版社、寿郎社の下郷沙季さんから特に強く感じた。

労働組合を作った26歳の学生編集者に聞く
「ブラックな職場に悩む同世代におすすめしたい本」フルコース

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下郷さんはかっこいい。
強く熱い心を持っている、だから優しい。それがかっこいい。
世の中にある数多くの理不尽を放置しないで権利を行使するし、そのための義務をちゃんと果たす。
問題の根本を見直す。
文字にすると当たり前のことなのに実行するのは難しく、「なぁなぁ」にして日々を消化してしまうことが多い。
そこから逃げずに勉強し、考えて行動ができる、やっぱり下郷さんはかっこいい。

はじまり、守る

藤女子大学 人間生活学部 食物栄養学科 准教授 隈元 晴子さん

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病理医ヤンデル先生 こと 市原真さん

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改めて二人のフルコースを並べてみると「命に関する話」という共通点があると感じた。
現役の大学教員である隈元さんはやはり学生を社会に送り出す立場だからか、「はじまり」に関する本が多く、医療従事者である市原さんは"人は誰しもいつか社会からアウトしていく"ことを念頭に起きつつ「つづけ方」と「おわり方」をどうするかを問いかけた対象的な視点を持っていた。

はじまらないとおわることもできない。命を途切れさせないために自分が出来ることは何かあるだろうかと深く考えさせられた。

心の中にある宝箱

「フルコース」って一体なんだろう?とたまに考えることがある。
なんでこんなに読書家でもない自分の心に届くのか。ひとに言いたくなっちゃう話が多いのか。

最初は選者の皆さんが単に好きな本を教えてくれる企画だと思っていたけれど、いまはその人が生きていくうえで宝箱のように大切にしていることを教えてくれる企画ではないかなと解釈している。

最近は「フルコース読んでますよ」とか、道外の業界関係者からも「北海道書店ナビを読んでから来ました」という声を聞かせてもらうようになってきた。
ありがたく感じつつ、これからも「手前味噌なんですが、最高に面白い企画なんですよ」と僕自身が言えるように誠実に、丁寧に、ハッピーに続けていきたいです。

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