[イベントレポート]NPO法人北海道ブックシェアリング10周年記念事業
「北の読書環境シンポジウム」に書店ナビも参加!
[2018.7.23]
北海道の読書環境整備を目的に発足、東北の被災地も応援
2018年6月24日(日)、札幌市中央区の札幌エルプラザでNPO法人北海道ブックシェアリングの10周年記念事業「北の読書環境シンポジウム」が開催されました。
荒井宏明さんが代表を務める北海道ブックシェアリングは、2008年に教育・図書関係者8名が発足。
広大さゆえに地域格差の影響が色濃く出やすい北海道の読書環境を整備し、「だれもが豊かな読書機会を享受できる北海道」にしようと活動を続けています。
●北海道ブックシェアリングの主な活動
- 読み終えた本の再活用
持参か郵送、集荷(100冊以上)によって集まった本を図書あるいは図書予算が不足している公共施設に無償で提供
- 大麻銀座商店街ブックストリート
江別市の大麻銀座商店街で「屋外古書市」を通年、月に一度実施し、商店街の活性化に尽力
- 古書店「ブックバード」&無書店自治体をめぐる「走る本屋さん」を経営
荒井さんが所有する移動図書館車「やまびこ号」で書店のない自治体をめぐるかたわら、大麻銀座商店街に約10坪の古書店を経営。
詳細は下記の書店ナビの記事をご覧ください!
このほか、無料情報誌「ぶっくらぼ」のマンスリー発行や札幌駅前通り地下歩行空間(チカホ)で定期的に古書バザー「ぶっくらぼステーション」を開催。
2011年の東日本大震災後は1年半にわたり宮城・岩手両県で支援活動を行い、2012年には陸前高田市に仮設図書館を建設・提供するなど、東北の読書環境整備にも大きく貢献している団体です。
設立10周年となる今年は、これからの活動に向けた課題の顕在化と課題解決に向けたネットワークづくりを目的に初の本格的なシンポジウムを開き、当日は日曜にも関わらず本に関わる70人近くの参加者が集まりました。
「公共図書館」「学校図書館」「書店」の現状を共有
第一部は北海道の本にまつわるゲストスピーカー3名の現状報告から。公共図書館の視点として市立小樽図書館の鈴木浩一館長が登場し、図書館の動きを参加者と共有しました。
鈴木館長が示したのは、全国各地で活発な図書館の例。貸出冊数のみによって評価されてきた図書館が「まちづくりやコミュニティに役立つ場として変わりつつある」と解説しました。
道南の蘭越町にある生涯学習施設、通称「花一会図書館」は今年正式に図書館法に基づく公共図書館になるという。
続くスピーカーは、北海道学校図書館協会事務局の大久保雅人次長です。北海道の3分の1近くが無書店自治体という厳しい状況下では、子どもたちにとって学校図書館が非常に大きな役割を担うところですが、現実には「人(司書)も本(蔵書数)もまったく足りていない」状態が長く続いているそうです。
こうした事態の好転には「家庭・地域・学校、そして行政が連携した読書活動の推進」が必要だと力説しました。
学校司書の配置状況を見ると、小中高いずれも全国は過半数を超えているが、北海道は小学校14.2%、中学14.9%、高校にいたっては5.6%と低く、事務職員などが図書館司書の役割を兼務しているという。
3番目は、本サイト「北海道書店ナビ」のライター佐藤優子が書店取材を通じて得た「元気のある書店・ブックカフェ」から読み取れる3つのキーワードと事例を紹介しました。
●元気書店&ブックカフェの3つのキーワード
1.選書力 砂川「いわた書店」、SNSで展開している「風味絶佳」
2.イベント 札幌「旬カフェ」、千歳「まちライブラリー@千歳タウンプラザ」
3.チャレンジ 浦河町「森の六畳書房」、札幌「書肆吉成丸ヨ池内GATE店」
また、5冊の本を料理のフルコースに見立てる「本のフルコース」は、選書を通じた人物紹介でもあり、今後も熱量のある記事で1人でも多くの読書意欲を喚起できれば、と述べました。
「読書人を増やすには、家庭など身近なところから増やすことも効果的」と提案した。
飛び交う意見を「見える化」するグラフィッカーが大活躍!
本シンポジウムでは、「グラフィッカー」と呼ばれるスタッフが会の進行にあわせて内容をホワイトボードに視覚化していく〈レコードグラフィック〉という手法が導入されていました。
第一部のクロストーク、ゲスト3人の発言を色別に書き写していくグラフィッカーの丸藤健悟さん。完成図を参加者が次々とスマホに撮っていた。
第二部は、来場者が3つのグループに分かれて、それぞれ「本と出会う(乳幼児と本について)」「本に親しみ、本で学ぶ 小中学生の読書を考える」「本と生きる 大学生以上の読書について考える」についてディスカッション。
ここでもまた各グラフィッカーが大活躍! 大きなテーマについて飛び交うさまざまな意見をイラストも交えて集約していきました。
分科会2のテーマは「本と出会う」。ページをめくるとステージが変わるイラスト構成が皆に絶賛されていた。
分科会3「本と生きる」では、各自のマインドマップづくりからスタート。出たキーワードを樹木の"枝葉"に見立ててつなげていった。
すべてのプログラムを終えると、荒井さんがこの日を機に進めたいネットワークづくりの一環として、定期的な「読書環境研究会」の開催を宣言。
「研究会と銘打っていますが、どなたでも参加できる気軽な集まりをゆるやかに始めたいと思っています。興味がある方はぜひ、私たちブックシェアリングにお問い合わせください」と参加を呼びかけました。
●読書環境研究会
【日時】8月29 日(水)午後6 時半~
【会場】札幌エルプラザ研修室1
【内容】初回は荒井さんが「小規模町村における読書環境の格差」をテーマにレクチャー。参加費は800 円(ぶっくらぼ会員は500 円)で、飲み物とお菓子付き。
【申込】Mail:bookshare001@yahoo.co.jp
TEL011-378-4195 FAX011-378-4196
書店ナビもいつも頼りにしてる荒井さん。手前の女性は多忙な荒井さんをサポートする職員の武次奈映さん。この二人を熱心なボランティアスタッフたちが支えている。
「北海道の読書環境の向上」に向けて北海道書店ナビは、これからも北海道ブックシェアリングを応援していきます!