おすすめ本を料理のフルコースに見立てて選ぶ「本のフルコース」。
選者のお好きなテーマで「前菜/スープ/魚料理/肉料理/デザート」の5冊をご紹介!

第532回 mother's spaceミーナ 代表 菊地 三奈さん

Vol.195 mother's spaceミーナ 代表 菊地 三奈さん

mother’s placeミーナ 代表 菊地 三奈さん

リビングにハンモックがあるステキなご自宅でお話をうかがった。

[本日のフルコース]
おもちゃコンサルタントマスターの菊地三奈さんが勧める
「親子でニッコリ!おもちゃの魅力を味わう」フルコース

[2021.11.1]

「親子でニッコリ!おもちゃの魅力を味わう」フルコース

書店ナビ今回は札幌在住、認定NPO法人芸術と遊び創造協会が認定する「おもちゃコンサルタントマスター」であり保育専門学校の講師も務める菊地三奈さんにご協力いただきました。

東京で8年間保育の現場で働き、ご自身も二人の子どもの母親である菊地さん。青山学院女子短期大学芸術学科を卒業した後に「やっぱり、どうしても保育士になりたい!」と同じ短大の児童教育学科に入り直して資格を取得したというお話を聞いて驚きました。

菊地高校時代に保育所をしていた先輩の家で保育のアルバイトをしていて、赤ちゃんが全身でミルクを飲む姿に感動して、「ああ、これ以上の仕事はないな」と思い保育士を目指しました。

現役受験で合格した芸術学科でも油絵とか彫刻とか、いろんなことを体験できてすごく楽しかったんですが、もしこのまま保育士を諦めてしまったら、きっと私は一生後悔することになる。
そう思って「学費は自分で稼ぐから!」と親を説得して、同じ青山学院女子短期大学の児童教育学科に再入学しました。
短大に入学してから5年間、講義が始まる前の早朝と昼休みは大学近くのお弁当屋さんでアルバイトをし、夜も別のアルバイトプラス、ダンスサークルに入っていたのでその練習に明け暮れて…今考えたら超人的なスケジュール(笑)。でもとっても充実した楽しい学生時代でした。

書店ナビそうして念願の保育士資格を取得し、8年間保育園で勤務した菊地さんは結婚・出産を経て夫の仕事の都合で札幌に移住。
子育て支援が充実している札幌のまちで徐々に人脈を広げ、「お母さんが元気で幸せでいることが子どもの幸せ。その支援活動をする側になりたい」と、おもちゃコンサルタントの資格を取得し、2006年には「mother's spaceミーナ」を設立。自宅サロンや講演活動、おもちゃやアナログゲームの紹介を通して、子育て中の親子が毎日心豊かに過ごせるように、子育て支援活動を続けています。

北海道・札幌 親子の関わりと心を豊かにするおもちゃとゲーム mother's space ミーナ

https://happymina.com/

happymina.com

[本日のフルコース]
おもちゃコンサルタントマスターの菊地三奈さんが勧める
「親子でニッコリ!おもちゃの魅力を味わう」フルコース

前菜 そのテーマの導入となる読みやすい入門書

ちいさなことで調子にのろう!

ちいさなことで調子にのろう!
野出正和  クレヨンハウス
埼玉で「無垢工房」を主宰されているTOYクリエイターの野出正和さんが幼少期からおもちゃ作家になるまでの出会いやご自身の作品について書いています。後半は身近な材料で作れる手作り工作がたくさん掲載されていて、実用的でもあります。

菊地私が北海道グッド・トイ委員会の代表をしていた2004年、東京おもちゃ美術館で全国支部長会議に出席して、翌日グッド・トイ授賞式に出席しました。その年のグッド・トイ受賞者に野出さんがいらっしゃいまして(グッド・トイは「遊びのスペシャリストの投票で決まるおもちゃの賞制度」です)。
その時にご本人に「うち、野出さんの『忍者積み木』でよく遊んでたんです。よかったら今度札幌に来てください」と声をかけたら、その場でスケジュールを確認してくれて、2カ月後には本当に札幌で工作教室を開いてくれたんです!その後何回も札幌に来てくださいました。

忍者積み木。「ひとのかたち」

グッド・トイ2004を受賞した野出さんの代表作の一つ、忍者積み木。「ひとのかたち」からいろんな物語が生まれる。

著者のサイン入り

菊地さんの私物は著者のサイン入り。トレードマークのメガネが可愛い!

書店ナビ野出さんのおもちゃの魅力はズバリ、何だと思いますか?

菊地シンプルだけど可能性がいっぱい広がっているところ。保育って何をするにしてもすごく準備がいるものなんですが、野出さんの遊びはいつも紙コップとか割り箸とか台所にあるようなものがあれば準備OK!大変な思いをしなくても楽しく過ごせるんだよ、ということを私たちに教えてくれます。

それにね、工作教室では毎回、野出さんも自分が出したお題をそれは楽しそうに作るんです。そんな野出さんを見ていると、皆も自然と創作意欲が盛り上がる。
その姿は、私が目指す理想の講師像。野出さんからは本当にたくさんのことを学ばせてもらっています。

『紙コップめがね』

「『紙コップめがね』は保育専門学校の授業でも取り入れています。学生たちも好き好きに"シャネル"とか"バースデー"とか飾りをつけたりして、楽しみながら作ってくれるんですよ」

スープ 興味や好奇心がふくらんでいくおもしろ本

笑ってまなぶ子育てのコツ

笑ってまなぶ子育てのコツ
岩城敏之  三学出版
京都宇治のおもちゃ屋さん「キッズいわき・ぱふ」代表の岩城敏之さんが子育ての文化や子どものけんかについて綴っています。4コマ漫画もあって読みやすい!優しい視点で子育ての本質を伝えてくれます。 

菊地岩城さんは関西の方だからでしょうか、とにかく講演が面白い!私も岩城さんの講演を聞いて何度も笑い、何度自分の子育てが救われたかわかりません。

書店ナビ本書を一部引用すると、「母性だけでは子は育たない」のくだりだけでもこんなに面白いです。

「子育ては文化でした。母性の中には入っていません。別売りになっています。(中略)一人目は、意味不明です。スリッパなんかなめていたら、(中略)思わず口を消毒しなきゃ!と思ったりのするのが一人目です。
二人目になると、少々では死なないと思います。三番目になると、「なめとき」と渡したりします(笑)」

菊地(笑)子どもってなぜかスリッパが大好きですよね。
こういう冗談も交えながら、岩城さんは基本的に視点がすごく優しい。子育てって理想はあるけれど、実際には完璧にできないことだらけですよね。
でも岩城さんの本を読むと「そっか、頑張りすぎなくてもいいんだな」と思えてきます。
子育て中は字が多い本は読みづらいですし、4コマ漫画があってサラッと読めるところもおすすめです。

魚料理 このテーマにはハズせない《王道》をいただく

プーおじさんの子育て入門

プーおじさんの子育て入門
柿田友広作・相沢康夫絵  エイデル研究所
"プーおじさん"こと、静岡のおもちゃ屋「百町森」の柿田友広さんが文章を、当時「百町森」のスタッフだった相沢康夫さんが絵を担当。この本は子どもの成長やヨーロッパのおもちゃ・絵本・わらべうたにまつわる文化を紹介しながら、その大切さについて丁寧に語られています。

菊地この本で絵を描いている相沢さんは「百町森」でお勤めになりながら、おもちゃデザイナーとして世界的に活躍されていて、スイスの玩具メーカー・ネフ社(現在はドイツ)からも作品が販売されています。相沢さんは現在YouTubeでもおもちゃの情報を発信していて必見です!
相沢康夫 TOYちゃんねる - YouTube

《前菜》の野出さんがおもちゃのアイデアがパッと"おりてくる"タイプの人だとしたら、相沢さんはデザイナーらしく理知的に考えを組み立てていくタイプ。
講演会ではいつも少ない数のおもちゃで心に響くお話をされることに毎回感動しています。
この本はおもちゃを通して子どもたちに文化を伝えようとする姿勢がとても美しくて、心に残ります。

《本は親が選ぶもの》《感想を聞いたりあらすじを言わせない》。

《本は親が選ぶもの》《感想を聞いたりあらすじを言わせない》。「私も賛成です。大人だって感動的な朝ドラを見た直後に感想を聞かれたらイヤじゃないですか?(笑)。自分の中で余韻を噛みしめて静かに熟成したいのは大人も子どもも同じこと」

菊地あと、この本が素晴らしいのは、子どもの年齢に応じて遊び方があることを教えてくれるところです。「大きくなったんだから、あとは自分でやりなさい」ではなくて、幼児には幼児の、小学生には小学生なりの遊び方がある。

子育てを一本の線上で捉えて描かれているので「困ったなあ」と思った時はこの本を開くと必ずヒントが見えてくる。私は子育て中数えきれないほど、この本を開いてお世話になりました。

書店ナビ菊地さんのご長男は2021年の春から大学生になったとか。それも小さい頃から菊地さんが読み聞かせをしてくれたおかげで本好きに育ち、文学部にご入学。ステキですね。

菊地小さい頃は毎晩、長男が選んだ絵本を1冊、次男が選んだ本を1冊、そして私が選んだ絵本の合計3冊を読み聞かせしていました。
「読んで読んで」と何度もせがまれました。中川李枝子さんの「こぶたほいくえん」はもう表紙を見たくないくらい1日に何回も読みました(笑)。覚えてくれているかなあ。

肉料理 がっつりこってり。読みごたえのある決定本

東京おもちゃ美術館の挑戦 

東京おもちゃ美術館の挑戦
認定NPO法人日本グッド・トイ委員会編  言視舎
おもちゃの活動をしている全国のおもちゃコンサルタントの紹介を通して、おもちゃを使った社会貢献のかたちが見えてきます。乳幼児だけでなく、病児や高齢者など全ての人に必要なおもちゃの魅力がそれぞれの視点から語られています。菊地も9ページ執筆しています。

書店ナビ本書の編者である認定NPO法人日本グッド・トイ委員会は、現在の認定NPO法人芸術と遊び創造協会の前身。本書の増補改訂版がKindleにありますが、そちらの著者名は同協会になっています。
おもちゃコンサルタントの資格取得の普及や新宿にある東京おもちゃ美術館の活動など、おもちゃを軸にした社会活動があるんですね。

菊地はい、芸術と遊び創造協会のホームページでも「10の支援領域」を掲載しているので、興味がある方はぜひそちらをご覧ください。

NPO法人 芸術と遊び創造協会

goodtoy.org

菊地本書には、僭越ですが私も理事長から声をかけていただいて、自分の経歴や札幌に来てからの活動をご紹介させていただきました。
おもちゃコンサルタントの資格を取った後に「誰を相手に、どういう活動ができるの?」ということが知りたい方には、すごく参考になる実例集だと思っています。ぜひ手に取っていただきたいですね。

おもちゃコンサルタントマスター」の菊地さんのもとには執筆依頼も増えてきた

上級資格である「おもちゃコンサルタントマスター」の菊地さんのもとには執筆依頼も増えてきた。「学研の保育雑誌『Paprika』2022年春号に「ちょこっとあそび」の特集が掲載予定です」とのこと。45ページという渾身の監修企画になりそうだ。

菊地コロナの影響で難病児や障害児が入院している病院におもちゃコンサルタントが訪問できなくなり、「オンライン・おもちゃの広場」が始まりました。
オンライン時代になり、場所や移動時間に縛られずつながることができるようになり、私も週に一度参加しています。

デザート スイーツでコースの余韻を楽しんで

ボードゲームカタログ 201

ボードゲームカタログ 201
すごろくや編  スモール出版
※現在『ボードゲームカタログ201』は絶版で、『ボードゲームカタログ202』が発売されています。
東京・高円寺にある日本屈指のボードゲーム専門店「すごろくや」によるボードゲームガイドブック。みんなでワイワイ遊びたい時、協力ゲームをやってみたい時、戦略を楽しみたい時など場面に合わせたゲーム201タイトルを収録。遊び方のポイントが書かれたコラムも必読です!

菊地最後は、私が大好きなボードゲーム本をご紹介します!

パンデミックは協力ゲーム

「ご覧の通り、ゲームごとに解説があり、『ワイワイ・フィジカル』『知能・記憶』『ロマン』『運が楽しい』などのタグがついています。この『パンデミック』は協力ゲーム。みんなで力を合わせて治療薬を開発します!」

書店ナビ「うちの子はゲームに負けるとすぐ怒るので向いてないし、やらせたくない」という親御さんの声もありそうですが。

菊地そうおっしゃるお母さんがたの気持ち、本当によくわかります。ただね、うちの場合、小さい頃、長男が次男に負けて泣いて、落ち着いてから「どうして負けたと思う?」と聞いたら「宝狙いだった」って言ったんです。大物のカードばかりを狙って、小物のカードを集め損ねたと。

その一方で、他のゲームで次男が長男に負けて「もうやらない!」とカンシャクを起こした時も、翌日になったら次男が部屋の隅で黙々とそのゲームを練習していたんです(笑)。どちらも4歳頃でした。

書店ナビ二人とも「どうしたら次は負けないか」を自分なりに考えたんですね。

菊地そうなんです。ところが「次は負けたくない!」と考えた子どもの努力を、大人が「怒ったり泣いたりするからもうゲームはやらない」と遮ってしまうと、勝てるチャンスもなくなってしまう。
そこはもうひと踏ん張りして、チャレンジを簡単にあきらめないでほしいなって思います。

もし勝敗ゲームから離れたくなったら、おすすめは「協力ゲーム」。ゲームが勝つか、みんなが勝つか。考えた末に負けるのが悔しくて仕方がない時は「運のゲーム」に変えることだって、できるんです。
ゲームで遊んでいくと次第に、その子にリーダーシップがあるとか、空間認識が優れているとか、言葉が豊かだとか、子どもたちの特性が見えてきます。遊びの中で見えてくる子どもの得意や苦手は子どもが成長してからの勉強や部活にも同じ傾向が見られるんです。ゲームは遊びながら子どもを理解してサポートすることに役立ちます。

それに何よりいいことは、大人にとってもゲームをしている時は子どもと対等。他のことを考えずに集中できる時間が持てるのも、実はすごく大事なことだと思います。

ご自宅の押し入れには300近いゲーム

ご自宅の押し入れには300近いゲームがずらり。今は「カードに書かれたカタカナのお題をカタカナを使わずに説明して他の人に当ててもらう『どさんこボブジテン』が大人気です!」。例えば「ササラ」や「ザンギ」。あなたは何て説明しますか?

ごちそうさまトーク 「人生が楽しくなるからよ」母の教えを実践中!

書店ナビ短大時代には学業と朝昼晩のアルバイトとジャズダンスのサークル活動をかけもち、保育士になってからも次々と資格を取得。現在も玉川大学教育学部で学ぶ現役大学生の菊地さん。
そのパワーは一体、どこから来るのでしょうか。

菊地小学生の時に算数がわからなすぎて、母親に「勉強ってなんでしなくちゃならないの?」と聞いたことがあるんです。
その時の母の答えが「勉強していろんなことを知っている方が、人生が楽しくなるからよ。算数はパズルみたいなものなのよ」でした。「なるほど!」と子ども心に思いました。

先日の大学のスクーリングでは私くらいの年齢の子育て世代は今、「人生の正午」なんだと教わりました。毎日必死だった子育て時期はもう終わり、これからは10代の子どもの自立を見守る時。このあとは自分の老いを受け入れる、あるいは老いた親の面倒をみるなど年齢に応じた"大人の発達段階"が待っている。生涯学習は公民館などで習い事をするイメージでしたが、子どもだけではなく「自分も生涯発達する存在なんだ」という発見が新鮮でした。

こういう、まるで知らなかったことを教わるってすごく面白いと思いませんか? 新しく学んだことはすぐに学校の授業や自宅サロンで皆と共有して、「学び」と「教える」をうまく循環させていきたい。
前よりも授業がよくできるようになった自分が、また面白い。…つまりは単純に面白いことが好きなんです(笑)。

書店ナビ保育の実践経験と勉強で得た理論、そこに加えて菊地さんの"学びを楽しむ"明るさがあるからこそ、お母さんがたも安心して「mother's space ミーナ」を頼ってくるのかもしれませんね。
大人もおもちゃで遊びたくなってくる「おもちゃの魅力」本フルコース、ごちそうさまでした!

菊地三奈(きくち・みな)さん

1972年東京生まれ。青山学院女子短期大学芸術学科・児童教育学科(専攻科)卒業後、保育士として8年間保育園に勤務。札幌に移住後の2006年、長男4歳・次男1歳の時に「mother's space ミーナ」を設立。子育てサポートの自宅サロンや親子イベントの企画、保育士研修を始める。認定NPO芸術と遊び創造協会おもちゃコンサルタントマスター。学校法人経専学園 経専北海道保育専門学校 非常勤講師。木育やコーチングの資格も多数取得。

北海道・札幌 親子の関わりと心を豊かにするおもちゃとゲーム mother's space ミーナ
https://happymina.com/

happymina.com

「私が大好きなボードゲームは 『宝石の煌き』です!」

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