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第539回 BOOKニュース おすすめ北海道本盛り合わせ!

[BOOKニュース]おすすめ北海道本盛り合わせ!

[2022.2.7]

おすすめ北海道本盛り合わせ

Book1●勇気と行動力で引き寄せた「大人の恋愛小説」装丁画デビュー!

大人になったら、

大人になったら、
畑野智美  中央公論新社

2022年1月に刊行された東京出身の作家・畑野智美さんの新刊と北海道の接点、それはこの表紙にある。
物語は、カフェの副店長として働くメイが35歳の誕生日を迎えたところから始まる。学生時代からつき合っていたフウちゃんと別れて以来、「八年間、誰のことも好きになれなかった」メイは、洗顔方法も洗顔フォームもすでに十代や二十代とは異なる"お年頃"だ。
仕事に大きな不満はないが、このまま自分は周囲の結婚や出産を傍目に見ながら生きていくのか。そもそも「いい人生を送る」ってどういうこと?つい沈みがちなメイの周辺がじきに少しずつ動き出す…。

この「大人のための恋愛小説」の表紙イラストを手がけたのは、札幌のイラストレーターFutaba.さん。本書が初の装丁画デビューとなる。
2021年に自身の作品集を制作し、見てほしい装丁家や出版社に送ったところ、装丁家経由で出版社に名前が知られ、本書の依頼が持ち込まれた。

福田さんの作品集

Futaba.さんが各所に送った作品集。勇気と行動力で長年の夢だった装丁画の分野に飛び出した。

普段は広告のイラストレーションを手がけることが多いというFutaba.さんに、初めての装丁画制作の感想をうかがった。

Futaba.広告のお仕事はまずクライアントさんがいて、そのイメージを描き手である私が咀嚼してイラストに描きおこしていきますが、今回の装丁画は著者である畑野さんの物語をベースに編集者さん、装丁家さんと皆で話し合ってイメージを作り上げていく。そのプロセスがとても重要である、ということを体験できました。
書店で目に止めてもらうこと。
読み終わった時に物語の余韻を楽しんでもらう表紙になること。
この物語が長い時間、誰かと共に歩んでいけるよう、
誰かの宝物になれるように物語を届けるお手伝いをすること。

本の装丁画にはそんな意味があることも学ばせてもらいました。

実際、刊行後に読者の方がわざわざ私のインスタを探して感想をくださったりして、〈本〉というコンテンツが持つパワーを実感しています。
一つでも多くの物語を届けるイラストを描けるよう、またコツコツと頑張りたいです!

メイと後輩社員との噛み合わなさや常連客との微妙な距離感、店長に昇進したいかどうかもわからない自分の気持ちなど、お仕事小説としてもリアルな『大人になったら、』。
物語が進むにつれて、思わぬ北海道との接点も出てくるのでどうぞお楽しみに!

Futaba.

https://www.instagram.com/futaba.illustration/

Book2●正しいがん情報を届けたい!北海道のがん基礎知識&最新治療

どさんこドクターに聞く 教えて、北海道のがん

どさんこドクターに聞く 教えて、北海道のがん
高橋將人  亜璃西社

「身内や友人知人の誰もがんにかかったことがない」という人を探す方が難しい時代に、北海道の出版社が2021年11月に刊行。
がんのスペシャリストである北海道がんセンター副院長が、がん予防の生活スタイルや最新の治療法など、北海道のがんの基礎知識をわかりやすく解説してくれる。

以下の「あとがき」を読んだだけでも安心感が込み上げる。
「実はインターネットでがんのことを調べると、最初に出てくるのは、医学的な根拠のまったくない高額な治療やサプリメントのサイトなのです。…(中略)がんの患者さんやご家族が、こうした悪質なサイトにだまされることを防ぎたいという切実な思いから、本書では困った時に参考になる、がん診療についてのさまざまな正しい情報をご紹介しています。」(本書あとがきより)

株式会社 亜璃西社(ありすしゃ)

www.alicesha.co.jp

Book3●「難解」な巨匠作品を読み解く!〈タルコフスキー本〉の決定版

終わりなきタルコフスキー

終わりなきタルコフスキー
忍澤勉  寿郎社

「「難解」の枕詞がつくソ連の詩的映像作家アンドレイ・タルコフスキーが生涯に撮った8本の映画を、微に入り細をうがって読み解き、全作品のフィルモグラフィーとタルコフスキー家の年譜も収録した〈前人未踏〉の「わかりやすい」タルコフスキー映画解説書」(寿郎社Facebookより)

著者の忍澤勉(おしざわ・つとむ)さんは1956年東京生まれ。編集プロダクションや出版社を経て現在はSF小説やSF評論を執筆。日本SF作家クラブ会員。「『惑星ソラリス』理解のために――『ソラリス』はどう伝わったのか」で第7回日本SF評論賞の選考委員特別賞を受賞。
寿郎社の既刊本『北の想像力』(2014年)にも「心優しき反逆者たち」と題した北海道出身の作家・佐々木譲評論を執筆している。

寿郎社 北海道札幌市の出版社

www.ju-rousha.com

Book4●北海道マガジン「カイ」で連載中!「一道塾」の塾生が北海道本を解説

小説を旅する 北海道

小説を旅する 北海道
合田一道ほか  柏櫓舎

北海道を代表するノンフィクション作家・合田一道(ごうだ・いちどう)さんは道新文化センターでノンフィクション作家の養成塾「一道塾」を主宰。その塾生たちの作品を一冊にまとめた本書が柏櫓舎から2022年2月8日に刊行。

章立ては「札幌・小樽編」「道央編」「道央編」「道央編」「道南編」。三浦綾子『氷点』や本庄睦男『石狩平野』、武田泰淳『ひかりごけ』、佐藤泰志『そこのみにて光輝く』など誰もが知っているタイトルが並ぶが、実際に読んだことがあるという人は案外少ないのではないか。
「北海道舞台のウエスタン劇」佐々木譲『北辰群盗録』や「希望の灯ふたたび」乾ルカ『明日の僕に風が吹く』など、目次の中から読んでみたくなるタイトルを探すのも面白い。柏櫓舎のサイトで「ためし読み」もできる。

「小説を旅する」は現在も北海道マガジン「KAI」で連載中!!

柏艪舎

hakurosya.ocnk.net

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