【NEWS01】
「この人たちを呼びたい!」書店員の熱意にこたえて
新刊『スローシャッター』チームが三省堂書店で来札トーク!
左から『スローシャッター』出版元の田中泰延さん、トークの企画者である三省堂書店札幌店の工藤志昇さん、著者の田所敦嗣さん、装幀を担当した上田豪さん。
2023年1月15日、外の雪が溶けてしまうような熱量たっぷりの新刊トークイベントが、三省堂書店札幌店で開催された。
著者は会社員のかたわら、紀行作家としてデビューしたばかりの田所敦嗣(たどころ・あつし)さん。2022年12月に初めての著書『スローシャッター』をひろのぶと株式会社から刊行した。
- スローシャッター
田所敦嗣 ひろのぶと株式会社 - ネットで大反響連載、累計30万PVを超えた田所敦嗣の紀行エッセイを書籍化。2022年にベトナム取材を敢行した書き下ろし新作も美しいカラー写真と共に収録。
「私たちはフリー素材です。どんどん写真を撮ってSNSで広めてください!」という、ひろのぶと株式会社代表の田中泰延さんの朗らかな一言から始まった今回のトークイベント。
前半は田中さんが進行を務め、著者の田所さんと本書を「全方位でデザインした」装幀家上田豪さんと共に本書の制作を振り返った。
上田さんは本づくりの最初にキーワードを曼荼羅のようにつなげたマインドマップを作成。全員で「本の世界観」を共有したという。
タイトルの「スローシャッター」も上田さんの案が採用され、ロゴはなんと万年筆による手書き!「人と人とのふれあいの話なのでデジタルのフォントじゃなくて体温が感じられるものにしたくて」(上田さん)
水産関連の商社に勤め、今も現役で地球上を出張してまわる田所さん。そもそもnoteに紀行文を書き始めた動機は、「出張の話って職場でも家族にも話さない、最も人に話さない話題ですよね。それを書くことで自分自身が面白かった。そう思えたのは、先にヒロノブさんが書いた『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を読んでいた影響もあると思います」
ということは、田所さんのnoteを読んで惚れ込み、ぜひうちで出版を!と持ちかけた田中さんと田所さんは互いに愛読者だったことになる。
しかもそこから愛読者の輪はさらに広がり、Twitterで田中さんが書籍化始動の喜びをつぶやいたところ、札幌から誰よりも早く「本になると思ってました!完成したらぜひうちでトークイベントを!」とコメントしたのが、ほかでもない、この日の立役者、田所noteと『読みたいことを、読めばいい。』双方を愛読していた三省堂書店の工藤志昇さんだったのだ。
工藤さんが感じる田所さんの文章の魅力は、
「導入がとても好きなんです。例えば、〈ズルいヤツというのに、出会ったことはあるだろうか。〉で始まる「最小の国から来た男」。これも最初はどんな話になるんだろうと漠然とした思いで読み進めていき、最後にもう一度導入に戻ってくると、読む前とは違った思いが湧き上がってくる。
それって旅と同じで、旅も出発地点を発ち、旅先でいろんなことを経験してまた出発地点に戻ってくると、見慣れたものも変わって見えてきますよね」
と語り、田所さんが旅で感じた〈心象〉を導入に託しているのではないかと読み解いた。
後半は登壇もした工藤さん。自分のことがスクリーンに写ってビックリ顔。普段は児童書と人文書の担当だが今回のトークイベントは文芸担当の同僚に熱心にはたらきかけて実現。その献身ぶりに田中さんが「工藤さんと目が合うと泣いちゃいそうであんまり見れません」と打ち明けた。
どこを切り取っても胸が熱くなるようなエピソードばかりのトークだったが、最後の質問タイムにも、もうひとやま盛り上がりが待っていた。
質問に手をあげた男性が、実は本書の帯に「出張ってこんなにやさしくて、あたたかくて、せつなくていいのか。いいみたいだぞ。」と推薦文をよせたコラムニスト前田将多さんだったのだ。関係者には内緒で、大阪から単身「来ちゃった」と顔なじみのチームを驚かせた。
トークの締めくくりに上田さんが「読み終わってもずっと手元に置いて長く愛してほしい。そう思ってもらえる本を作ったつもりです」と語れば、田中さんも「工藤さんみたいな書店員さんに見つけてもらえて本当にありがたかった」と感謝を口にした。
著者の田所さんも「自分の本が本屋に並ぶなんて照れくさいですが、普段は裏方である仕事の話をまとめることができてよかった。仕事って楽しいんだなと改めて思いました」と噛みしめるように話す姿に、会場から温かな拍手が送られた。
最後は編集者の廣瀬翼さん、ひろのぶと株式会社の元気社員加納穂乃香さんも一緒に記念写真タイム。かけ声はなぜか「すしざんまい!」
後日、工藤さんにコメントをいただいた。
「イベントを終えた今は、まさに旅を終えた時のような心地よい疲労感に包まれています。
思い返すと、ひろのぶと株式会社さんが考えてくださった、イベントタイトルの「本になっても、旅はつづく。」がすべてを物語っているような気がします。
執筆、編集、校正、装幀、印刷、製本…
さまざまな旅を経て本は出来上がりますが、もちろんそこで終わりではないわけで。
書店に届き、読者の手に渡り、読者が各々の世界へと旅立っていく。
そして、その旅の過程で皆さんが集い、たとえわずかな時間でも心が繋がった瞬間が今回のイベントだったように思います。
集まってくださった皆さんやSNSなどでイベントの様子を見守ってくださった方々にも、心地よい疲労感とともに「ああ、良かったな」と思っていただけたら嬉しいですし、その気持ちが間違いなく次の企画へのモチベーションになります」
本書の発行元ひろのぶと株式会社も熱心なファンが多い新興の出版社だ。「『スローシャッター』の続編も出したいので応援よろしくお願いします!」(田中さん)
三省堂書店札幌店では田所さんの選書フェアも展開中。工藤さん、次の企画も楽しみにしています!
【NEWS02】
一万円選書のいわた書店いわたまさんとラボハコ選書の真奈美さんが俊カフェの古川さんに呼ばれた「選書のお話会」2月12日開催!
今、個人書店やブックカフェが力を入れている「選書」サービス。
北海道書店ナビの選書企画「本のフルコース」を取材していてもわかるが、選書には何か"決まり手"があるわけではなく、選者の数だけさまざまな思いやメソッドがあると思う。
そんな選書にまつわる楽しいお話会が、2023年2月12日(日曜)に札幌市中央区の「俊カフェ」で開催される。
ゲストは、「一万円選書」で全国に知られる砂川の「いわた書店」から書店員のいわたまさんと、札幌市の市電「西線6条」停車場から徒歩3分の「ものがたり広がる書店ラボラトリー・ハコ」オーナーの山田真奈美さん。
いわたまさんは父・岩田徹さんの看板企画 「一万円選書」に次いで定着しつつある「いわたま選書」に力を入れており、山田さんも「ラボハコ選書」を展開中。
そして、この会の企画者である俊カフェオーナーの古川奈央さんも「俊カフェ選書」で楽しく頭を悩ませており、次のような丁寧な解説文も送っていただいた。そのまま掲載する。
「書店で時間をかけて平積みや棚差しの本を眺めて、出会いを待つ。オンラインショップで(アルゴリズムによって)勧められた本をカートに入れる。知り合いの紹介に興味を持って買う。本を買うきっかけは様々です。
そんな様々な本との出会いの方法の1つとして「選書」があります。
砂川のいわた書店の「一万円選書」が有名ですが、どこの本屋さんでも(特に店の人とお客様との距離が近ければ)、お客様にピンポイントで「これがお勧め」とご提案することがあると思います。それも選書の1つ。
その方が求めているのはどんなものなのか、いま、どんな気分なのか、そんなお話を聞くことで、本を提案し、喜ばれるととても嬉しくなります。
俊カフェでも通販サイトで選書メニューをご用意していますが、とにかく我流です。そこで、「選書もしますよ」と公言している書店員の方に、どのようなことを心がけているのかなどを聞きたいと思ったのが、企画のきっかけです。
また、私たち三者三様の選書のお話をお伝えすることで、「人に本を選んでもらう楽しみ」を、本好きの皆さまにお届けできたらいいな、という気持ちもありました。
とはいえ提案する側も、個性があります。選書を提案したい側と、依頼したい方との出会いの場にもなるといいなと思っています」
「いわた書店」いわたまさん
「lablatory haco」山田真奈美さん
「俊カフェ」古川奈央 がお届け
選書のお話会
日時:2023年2月12日(日)13~15時(物販含む)参加費:2500円
定員:20名
★申し込み方法
俊カフェへお電話(011-211-0204)もしくは「俊カフェ」FBページへのメッセージでお申し込みを。
【NEWS03】
三省堂書店(東京)のオリジナルブックカバーレーベル
第一弾、4人の「文豪FACE COVER」コンプリート!
再び三省堂書店の話題だが、こちらは東京情報。2022年11月のBOOKニュースでお届けした三省堂書店のオリジナルブックカバーレーベル「BOOK COVER FOR BOOK LOVER」の続報を。
その第一弾は2022年10月29日から三省堂書店小川町仮店舗(東京都千代田区)で配布された全4種類の「文豪FACE COVER」。
2カ月にわたって与謝野晶子、夏目漱石、太宰治、そして「シークレット」のブックカバーが順に無料配布された。
それを首都圏在住の知人に頼んでコンプリートしてもらい、到着した実物が、こちら!
島根県在住のイラストレーター平井利和さんが描いた「文豪FACE COVER」。誰が誰かは一目瞭然。そして中央、オレンジが…
各文豪のカバーに添えられたキャッチコピーは、本人ゆかりの有名な文句をもじったもの。
与謝野晶子は「君 読書邪魔することなかれ」、夏目漱石は「吾輩は読書中である」、太宰治は「積読の多い人生を送ってきました」。
「シークレット」の人物は、「読み切るべきか寝るべきか、それが問題だ」(名乗ったも同然!)
次の第二弾が待ち遠しいが、札幌にもブックカバーを活かしたDIYキット「函文庫」プロジェクトがある。ブックカバーや雑貨好きの方はぜひフォローしてもらいたい。